経営戦略×パッケージデザイン×ブランディング
公開日:2022年09月02日(金)|ブランディング
商品+箱=ブランド体験。顧客接点を再構築するパッケージ戦略

1. イントロダクション:変化するブランド環境とパッケージの役割
近年、消費者の購買行動やブランド評価を取り巻く環境が劇的に変化しています。
- オンライン/オフラインの境界が曖昧になり、初めて手に取るのが画面であっても「開ける」体験を期待されるようになっています。
- ESG/サステナビリティ意識の高まりにより、「箱=ただの梱包」ではなく、ブランドの価値観を体現するメディアとなっています。
- AI・データ主導マーケティングが進む中で、ブランドの ”感じさせる価値” = 感性資産 が勝負どころです。
このような中、商品パッケージ/貼り箱は「単なる保護・運搬機能」から脱却し、経営戦略の中核にある「ブランド接点/ブランド体験装置」として再定義されるべきです。
(過去記事でも「パッケージは経営戦略」 と位置付けています)
2. パッケージ=経営戦略の一部である理由
■ 接点の数/質を制する
ブランドが顧客と出会うタッチポイント(ホームページ、SNS、店舗、カタログ、パッケージ)は多数あります。特に物理製品では、最後の接点=箱を開ける瞬間がブランド体験を決定づけることが多い。過去記事でも「ブランドと消費者との顧客接点(タッチポイント/コンタクトポイント)をつくり」 と書かれています。
■ コストではなく投資として捉える
パッケージ費用を「コストセンター」と捉えてしまうと、削られがちです。しかし、ブランド価値・顧客ロイヤルティ・再購入率に影響を与えるメディアとして捉えると、「ブランド資産を育てる投資」になります。過去記事でもこの見方を推奨しています。
■ 差別化/ポジショニングのためのツール
競合が激しい市場では、機能だけでは差別化できません。そうすると「顧客の記憶に残る立ち位置=ポジショニング」が鍵になります。ここで、箱の手触り、開ける瞬間、内側の仕掛け、ストーリー展開などがブランド体験の核になり得ます。過去記事も「他ブランドとの差異化によって、独自のポジションを確立しましょう」 と書いています。


3. ブランディング×パッケージデザインの統合型アプローチ
3-1. ブランドの根っこ:伝えるべき「意志」と「約束」
ブランド構築には、単に「キレイなデザイン」をつくるだけでは不十分です。
- 企業/ブランドが何を信じ、何を約束し、どう行動してきたか。
- その「根っこ」がパッケージに反映されていないと、浅いものになります。
過去記事では、弊社キャッチコピー「意思を運ぶ箱。」を例にして、「ブランドの様々なメッセージ … 錆びない1本のキャッチコピーがあるだけで …」 と述べています。
3-2. デザイン/アートディレクションで「感情体験」を設計
ブランドの本質を伝えるために、クリエイティブ(クリエイティブディレクション)とビジュアル(アートディレクション)は分けて考えるべきです。過去記事でこの定義も示しています。
貼り箱の世界では、以下の要素がキーです:
- 素材・質感(CMF:カラー・マテリアル・仕上げ)
- 箱を手に取った瞬間の「重み/手触り」「開ける音」
- 箱を開けて現れる中身+仕掛け(インナーデザイン)
- ブランドストーリーの視覚化(箔押し、エンボス、シークレットメッセージなど)
これらを統合設計できると「箱を開ける=ブランドとの対話」になります。
3-3. 経営層視点:KPI・ROIで語る
「感覚的な話」だけで終わると経営層には響きません。
なので:
ブランドエクイティの上昇 → 無形資産としての評価(将来M&A時など)
過去記事では「パッケージ/パッケージデザイン、ブランドの無形資産が利益を生み出す」とも言っています。
箱でブランド価値が上がる → 再購入率X%向上/リピート率向上/価格プレミアム取得可能
接点強化による顧客単価UP/クロスセル誘発
- 箱でブランド価値が上がる → 再購入率X%向上/リピート率向上/価格プレミアム取得可能
- 接点強化による顧客単価UP/クロスセル誘発
- ブランドエクイティの上昇 → 無形資産としての評価(将来M&A時など)
- 過去記事では「パッケージ/パッケージデザイン、ブランドの無形資産が利益を生み出す」とも言っています。

4. 今押さえるべき最新トレンド
以下、付加価値を高めるために、最新トレンドを踏まえた提案ポイントです。
・サステナビリティ&リジェネラティブデザイン
プラスチック削減・再生紙・生分解性インクなどが当たり前になってきています。箱も例外ではなく、環境配慮仕様+高級感という逆説的な価値がブランド差別化になります。
例:再生紙でも質感を高め、箔押しや手触りでプレミアムに見せる。
・デジタル+リアル統合体験(Phygital)
店舗での手触り体験と、ECでの開梱体験を連動させる設計。たとえば、ARスキャンで箱の裏面がブランドストーリーを語る、など。貼り箱であれば、箱内部にQRコード+ミニストーリーを仕込むという仕様も。
・UX重視&アンボクシング演出強化
「開ける瞬間」がSNSで動画化されやすい今、インスタントな感動や驚きを設けるのが有効です。
例:蓋を開けたときに中箱がスライドで現れる、高級リボン仕様、二段構造など。
・データ/AI活用によるパーソナライズ化
少ロットでもパーソナライズ印刷(名前、ロット、メッセージ)対応が増えています。貼り箱でも「シリアルNo.」「限定カラー」「顧客名入れ」などを入れることで希少価値を出せます。
・ブランドコミュニケーション設計としての箱
箱をただ「包む」ものから、「ブランドとの会話装置」に進化させる動きがあります。箱を通じた「体験の設計」=ブランドタッチポイントのひとつとして、企画・製造時点から戦略に入れ込む必要があります。
5. 実践ステップ:貼り箱を“戦略ツール”に落とし込む方法
ステップ 1:現状分析/ブランド課題の抽出
- 自社製品パッケージの役割を棚卸し、「保護→運搬→ブランド伝達」どこで弱いか。
- 競合パッケージを調査し、手触り・開け方・スペシャリティ演出・ブランド体験の中で自社が遅れていないか。
- 顧客接点として箱がどう機能しているかを、顧客視点で確認(開梱動画、SNS投稿、レビューなど)。
ステップ 2:ブランドポジショニング&ストーリー定義
- 自社が「行きたい/行くべき」ポジションはどこか。過去記事でも「ポジショニングは行ける場所ではなく、行きたい/行くべき場所」 と述べられています。
- そのポジションを支えるブランドストーリーを明文化。たとえば、「非効率を美学とする手づくり箱」「五感を動かす開梱体験」など。
- このブランドストーリーをサポートする1本のキャッチコピーを持つ(弊社では「意思を運ぶ箱。」)。
ステップ 3:パッケージ体験設計(貼り箱を含む)
- 素材/仕上げ(高級紙、特殊加工、リボン、箔押し、シークレットメッセージ)をブランドストーリーに合わせて選定。
- 開梱動線設計(例:外箱→内箱→プロダクト)を考え、動画やSNS投稿を見据えた演出を入れる。
- 箱の内外にブランドメッセージ(キャッチコピー、短いストーリー、シリアル)を配置。
- サステナビリティ仕様や限定仕様/パーソナライズ仕様を検討し、コスト/メリットを経営視点で検証。
ステップ 4:KPI設定と投資回収の設計
- 箱リニューアルによる価格プレミアム設定可能性を試算。
- リピート率、顧客単価、口コミ指数(SNS投稿数・開梱動画数)などを目標設定。
- パッケージコスト増分を「ブランド価値向上による売上増 or 粗利改善」で回収するスキームを立てる。
- リニューアル後、実際の数値(売上変化、開梱体験投稿数、NPS)を追い、効果を定量化。
ステップ 5:運用と進化
- パッケージ刷新後も「箱を通じたブランド接点」を定期的に振り返る。
- 季節/限定仕様/コラボ仕様などで箱に新たなストーリーを付加し、顧客の期待感を維持。
- 社内に「箱=ブランド体験装置」としての意識を浸透させ、製造・物流・販売部門も巻き込む。
6. まとめ:貼り箱を「沈黙した営業マン」に育てる
「箱は売れない」「箱はコストがかかる」と考えがちですが、それは経営戦略視点が欠けているからです。
貼り箱という物理接点を「ブランドの最初の会話」「ブランドの沈黙したセールスマン」「ブランド体験装置」として再定義すること。
そのためには、経営視点(投資・回収・ポジショニング)、デザイン視点(素材・開梱体験・感性価値)、ブランディング視点(ストーリー/キャッチコピー/顧客接点設計)を統合すること。
マコリンのように「貼箱の企画・製造」に携わる立場であれば、この統合型アプローチをクライアントに提示することで、単なる製造提供先ではなく、戦略パートナーとして提案力を高めることができます。
今は商品が素晴らしいから、それだけで売れる時代ではありません。
商品(ブランド)を取り巻く環境を整えることで、顧客の中にブランドイメージが生まれ、そこに共感することで販売につながるのです。
あなたもパッケージ/貼り箱と一緒に、モノ(商品)だけでなくコト(ブランドイメージ)を表現し伝えてみませんか?
参考記事:
- あなたは、パッケージに戦略があるか?
- パッケージがブランド・エクイティ/資産となる理由
- ティファニーの箱が捨てられない理由とは?
- パッケージ/パッケージデザイン、ブランドの無形資産が利益を生み出す
- ブランドの顔、驚くパッケージの費用対効果とは?
※クリエイティブについて
クリエイティブディレクションとアートディレクションには明確な定義付けはなく、重複する部分もあるので簡単に解説します。
クリエイティブディレクション:ブランド戦略などプロジェクト全体を統括すること。クリエイティブディレクターはわかりやすくいうと、映画でいう全体を統括するプロデューサー的な役割のことです。
アートディレクション:クリエイティブディレクションともかぶる部分が多いですが、主にプロジェクトのヴィジュアルなど視覚表現の監修を行う監督的な役割をいいます。
キャッチコピー:意思を運ぶ箱。
コピーライティング/クリエイティブディレクション:田中有史(田中有史オフィス)
デザイン/アートディレクション:浪本浩一(株式会社ランデザイン)
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