◎村上紙器工業所
クリエイターズネットワーク」シリーズ 2

村上紙器工業所の仲間であり友でもある、素敵なクリエイターたちをご紹介します。仕事上のパートナーであるだけでなく、公私にわたって刺激しあえる彼らの存在が、さまざまな糧となり支えとなってくれています。

クリエイターズネットワーク #2:田中有史氏

株式会社田中有史オフィス
田中有史 氏

村上紙器工業所とつながりのあるクリエイターを紹介するクリエイターズネットワーク。今回は、村上紙器工業所のキャッチコピー「意思を運ぶ箱。」の生みの親、コピーライターの田中有史さんをご紹介します。この6文字の意図するところは?町の工場がキャッチコピーを持つことの意味って? コラボしたブランディングの案件についても、たっぷりと語ります。

「貼箱ってなんやろ?」それが、村上さんとの出会いです。(田中)

― 初対面は2018年。メビック(クリエイティブネットワークセンター大阪)主催の“田中有史のクリエイティブ塾”に参加したことがきっかけだった。

田中 クリエイティブ塾の参加者は、デザイナーなどクリエイティブ関係の人たちがほとんどなのに、一人だけ製造業の人がいたんです。それが村上さんでした。なんでやろなぁ?と思って。その時に名刺もいただいたのですが、そもそも貼箱ってなんやろ?と。

村上 その時まで貼箱をご存知なかったと…(笑)

田中 箱にそんなに種類があるって知らなかったんです。家に帰って名刺に載っていたWEBサイトを見て、びっくり。ブログに難しいブランディング論がいっぱい書いてある。製造業なのに、変わった人やなぁと興味を持ちました。そこで共通の友人のアートディレクターさんに紹介してもらって、工場を見学させてもらったんですよね。

村上 そうでしたね。ちなみに田中さんのクリエイティブ塾は、2019年、2020年と続いたんですけど、ぼく、すべて受講しているんですよ。“クリエイティブの発想法”っていう感じの内容でね。そういう感覚は、ぼくたち製造業界にはほとんどないので、すごく新鮮でした。

田中氏のセミナーのポスター

田中 ぼくの方も村上さんの工場を見せてもらって、とても新鮮でしたよ。もっと機械化されているのかと思っていたら、究極の手工業でね。この時代に一つずつ手でつくるという方法を続けられている。しかも、かなり精度の高い技術で。

村上 日本のものづくりって、「匠の技」とか言われてメディアで持ち上げられたりしますけど、実際はそんなにかっこいいものじゃないんですよ。技術で他社と大きく差異化できるかと言われたら、それはむずかしいんです。技術だけでは価格競争の波に必ずのまれてしまう。だからブランディングの考え方を製造業にとり入れたいと考えるようになって。田中さんのクリエイティブ塾もその勉強の一環だったんです。

田中 現場に行ってみて、そのことが分かった気がしました。究極の手工業というだけでは、他社との差異化がむずかしいんだろうなと。でもサイトに書かれているブランディング論には、ちょっと誤解があるな、とも思って。

村上 プロの人から見たらそうですよね…(笑)。ブランディングの考え方を取り入れたいと思うものの、そんな製造業は他にいなくてね。具体的にどうすればいいのか分からず、手探りで学んだことを自分なりにサイトに綴っていたんです。

田中 確かに…なかなかいないでしょうね(笑)。ぼく自身はというと、工場を見せていただきながら話を聞いて、魅力的でおもしろい人やなぁと、村上誠という人間に興味を持ちました。

田中有史氏

あのキャッチコピーを見て、ちょっとしびれる感じがしたんです。(村上)

田中 工場を見学した日、興奮して熱に浮かされてしまってね(笑)。帰り道にいろいろ考えをめぐらせたんですよ。ブランディングについて独自の考えを書かれているけれど、バラバラしていて整理できていない。でもそこにキャッチコピーという傘を一本さしてあげたら、すべてが整理できるんじゃないかって。で、その日のうちに、キャッチコピーを20本ほどつくって送りましたよね。

村上 はい。あの驚きは忘れられないです!「こんなん書いてみたんだけど…」って、突然キャッチコピーがいっぱい送られてきて…ちょっと怖かった(笑)。でも確かに、こういうコピーがうちの工場にあったらいいなと思いました。

田中 そこで、後日もう一度ヒアリングをさせてもらって、ブラッシュアップしたものを提案させてもらいました。

村上 そうそう。その中に、今のキャッチコピー「意思を運ぶ箱。」という案があったんです。

田中氏が作成した村上紙器工業所のキャッチコピー

田中 「パッケージとはブランディングのツール」という、村上さんがずっと言われてきたことを、一言で表現したものです。意思というのは、企業の意思であり、サービスの意思、商品の意思。ブランディングって、つまりそういうことなんです。

村上 まさにこの言葉や!と思いました。ぼくが今まで書いたり話したりしてきたことが、あの6文字に表現されている。ちょっとしびれる感じがしましたね。

村上誠

“箱から始まるブランディング”ということを、宿題として考えてみようと。(田中)

― 刃物メーカー・株式会社福井(大阪府堺市)のブランド開発の案件で、初めて一緒に仕事をした。

村上 株式会社福井さんから、パッケージのリニューアルをしたいと相談があったことがきっかけでね。最近は海外向け商品にも力を入れられているという話を聞いて、それなら箱だけではなくて、コンセプトづくりから始めたほうがいいのではないかと提案したんです。すると、前向きに検討してくださって。さっそくクリエイター仲間に相談することになり、コピーライターならこの人だと思って、田中さんにお声かけしました。

田中 ぼく自身、貼箱を軸としたブランドづくりは初めてでした。通常のブランド構築では、最初に軸となるメディアを決め、そこから世界観を拡げていきます。パンフレットや会社案内など、その会社の全体像が分かるものが多いのですが、今回のスタートは貼箱。つまり箱が情報の乗り物になるということですね。だから“箱から始まるブランディング”ということを、制作チームの宿題として考えることから始めました。

村上 結果として、『HADO(刃道)』 というブランドが生まれ、パッケージの貼箱にはワイズベッカーさん(*)のドローイングが入りましたね。

『HADO(刃道)』の貼り箱

田中 あのドローイングによって、凜とした独特の世界観が生まれました。高級商品のパッケージ箱って、会社のロゴがかっこよく箔押ししてあったりします。でも貼箱を軸としたブランドづくりと考えると、それではやっぱり弱い。ワイズベッカーさんのドローイングがあってこそ、貼箱がメディアとして成り立っているんです。

村上 う〜ん、さすがだなと思いました。田中さんとアートディレクターの浪本さんが、コンセプトからブランドづくりをしていく現場を目の当たりにして、学ぶことがとても多かったです。

田中 ぼく自身も「箱」というものが、ユーザーと商品の一つの接点になりうるんだということを学ばせてもらいました。

村上 このブランドは、まだまだ生まれたばかり。これからもみんなで大切に育てていきたいですね。

*フィリップ・ワイズベッカー(1942〜):パリを拠点として活動するフランス人アーティスト。日常の風景にあるものを独特の感性で描くことで知られる。

『HADO(刃道)』の貼り箱

“広告”って、自分には縁がないと思っていました。(村上)
みんなが欲しいのは“広告”そのものじゃなくて、“広告効果”なんです。(田中)

田中 今後、HADOのような事例が増えていけば、村上紙器工業所は、他社との差異化がさらに進みますね。ただ貼箱をつくってくれるだけじゃなく、こんなに深い部分まで関わってくれるんだと。

村上 まさにあの「意思を運ぶ箱。」というコピーは、そのことを表してくれています。実際、ウェブサイトであのコピーを見て、「ここにお願いしたい」と依頼してくれる人が、時々いらっしゃって…。

田中 それは嬉しいですねぇ(笑)。

村上 あのコピーには、そのくらい力があるんです。「村上紙器工業所は、こういうことまで考えてくれる」ということを、あの6文字が語っていて、そこに共感してくれる人がいる。今後、そういうお客さんが増えそうな気がしています。

キャッチコピーによって、村上紙器工業所とお客さんがコミュニケーションしているということです。コミュニケーションって、広告がやっていることズバリそのものなんです。

田中有史氏

村上 以前は広告って大企業がつくるもので、うちには縁のない話だと思っていました。でも田中さんの話を聞いているうちに、広告っていうのは、規模にかかわらず、企業と顧客、商品とユーザーの接点をつくる、つまりコミュニケーションを図るためのものだということが、ちょっとずつ分かってきたように思います。

田中 そうそう。「広告を打つほどの資金がない」なんてよく言われますが、みんな欲しいのは“広告”そのものではなく、“広告効果”なんです。そこが分かれば、広告って必ずしもお金をかけなくてもいいということが理解できる。今の時代ならマスメディアを使わなくても、SNSでの情報発信で十分な広告ができます。

村上 製造業って機械設備には投資するんですけど、目に見えないものにはあまりお金を出したがらないんですよね。町工場で、コピーライターさんがつくったキャッチコピーを持っているところなんて、まずないですよ。

田中 村上さんは製造業の経営者の中でも、稀有な人だと思います。クリエイティブという形のないものに投資をすることを大切にし、そして村上紙器工業所が伝えるべきイメージや鮮度、広告的にいえば“シズル感”を理解されている。天性のプロデュース力があるんじゃないかと思います。

村上 いやぁ、嬉しいですね(笑)。ぼくも田中さんと話をしていると、自分がアップデートされているという感覚があります。本当にいい出会いでした。これからもいろいろ教えてくださいね。

田中 こちらこそ、よろしくお願いします。

田中有史氏

<参考ページ>

パッケージからはじまるブランディング、和包丁ブランド

ある日、コピーライター田中有史が、町工場のキャッチコピーを勝手に作った件
町工場のブランディングにつながるキャッチコピー

取材・文:岩村 彩(株式会社ランデザイン)
撮影・デザイン:浪本 浩一(株式会社ランデザイン)

株式会社田中有史オフィス

住所〒542-0081
大阪市中央区南船場3-2-6
大阪農林会館4階
TEL06-6243-7128
URLhttps://sites.google.com/site/hawaiianytanaka/
代表者田中有史
事業概要コピーとクリエイティブディレクション コピーライティングとクリエイティブディレクションの2本立てで仕事をしています。 おのおのを切り離すことも可能ですし、制作をトータルに引き受けることもできます。

公開日:2021年08月20日(金)

※掲載内容は取材時の情報に基づいています。

「クリエイターズネットワーク」シリーズ

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