「うちはBtoBだから」で止まっていませんか|パッケージを開けるのは会社ではなく"人"
公開日:2026年09月22日(火)|ブランディング
決裁を通すのはスペックより「安心感」。顧客社内の“味方”を強力に後押しする箱の力
<Xでシェア><Facebookでシェア>「うちはBtoBだから、箱にお金はかけられない」。そう思う社長にこそ読んでほしい話です。御社の箱を開けるのは、会社ではなく担当者という“人”。その人が上司に「この会社にしましょう」と言える理由を、大きな予算をかけずに一つからつくる方法をお伝えします。

「うちはBtoB/B2Bやから、ブランドなんて関係ない」
経営者仲間と話していると、よくこの言葉を聞きます。気持ちはよくわかります。取引先は決まっている。見られているのは性能と価格と納期。ロゴや箱にお金をかける余裕があるなら、設備に回したい。私も製造業の人間なので、その感覚は骨身にしみています。
でも今日は、あえてその「常識」を疑う話をさせてください。
10数年前、「カッコつけてる」と言われました
村上紙器工業所は、大阪の小さな町工場です。パートさんを含めて数名。お客さまはほぼすべて企業、つまり私たちもBtoBの会社です。
10数年前、私はこの町工場で「ブランディング」を掲げ始めました。当時、周りにそんな町工場はありませんでした。製造業の経営者仲間からは「何か、カッコつけてる」と囁かれました。正直、堪えました。
それでも続けた結果、いまでは世界的なブランドや大企業から相談をいただけるようになりました。「貼り箱屋」と名乗るのをやめて「パッケージコンセプター」と名乗ったのも、同業者と横並びで単価を比べられる土俵から降りるためでした。
BtoBにブランドは関係ない。私はそうは思いません。私たち自身が、その証拠のつもりです。
ブランドは「約束」。コトラーはBtoBにもそう言っています
マーケティングの大家フィリップ・コトラーは、2006年に『B2B Brand Management』という本を書いています(2025年に新版も出ています)。そこで彼は、ブランディングとは名前をつけることではないと述べています。ブランディングとは、「自社の製品やサービスが、一定の成果を届けます」という約束のことだ、と。
コカ・コーラやメルセデスのような消費者向けブランドだけの話ではありません。キャタピラーやシーメンスのような産業財メーカーも、この「約束」を磨いてきました。
BtoBの買い手は、実は“感情”で選んでいる
「でも、BtoBは理屈で選ばれでしょ」
そう思いますよね。ところが、GoogleとCEB(CEBは現在Gartner傘下)が2013年に、BtoBの購買担当者3,000人を調査しています。その結果は、意外なものでした。
※From Promotion to Emotion: Connecting B2B Customers to Brands(プロモーションから感情へ:BtoBの顧客とブランドをつなぐ)
一般消費者向けのブランドでは、感情的なつながりを感じている人は多くて1〜4割程度でした。一方、調査したBtoBブランドの多くは5割を超えていたのです。BtoBの買い手のほうが、取引先に強い感情を持っている。 これが調査の結論でした。
理由を聞くと、なるほどと思います。個人の買い物なら、失敗しても返品すれば済みます。でも仕事の発注で失敗したら、担当者の評価に響きます。下手をすれば、会社に居づらくなります。だから担当者は「この会社なら大丈夫」という安心がないと買えないのです。
さらにこの調査では、担当者本人にとっての価値があるとき、つまり「自信を持てる」「選んだことが誇らしい」と感じられるときには、同等の商品でも割高な価格を受け入れやすくなることもわかっています。

日本の中小企業では、まだ3社に1社
では、日本の中小企業はどうでしょうか。
2022年版の中小企業白書によると、ブランドづくりに取り組んでいる中小企業はおよそ3社に1社です。しかも、消費者向けの販売が多い会社ほど取り組む割合が高いとされています。BtoB中心の会社は、まだ少数派ということです。
同じ白書には、もう一つ見逃せないデータがあります。ブランドに取り組んでいる会社のほうが、「ブランドが取引価格の維持・引き上げに役立っている」と答える割合が高いのです。
裏返せば、こういうことです。あなたの同業者の多くは、まだ動いていない。 今なら、先に動いた会社が目立てます。
BtoBの箱を開けるのは、会社ではなく「人」
ここからが、パッケージ会社としての本題です。
BtoBの製品が届いたとき、その箱を開けるのは「〇〇株式会社」ではありません。発注を決めた担当者、現場の技術者、そして決裁した上司です。一人ひとりの人間が開けるのです。
以前、産業用ロボットや工作機械で世界的なシェアを持つメーカーさんの貼り箱をつくりました。その機械で加工した金属サンプルを納める箱です。商談の場で、お客さまの目の前で開けるための箱でした。
想像してみてください。そのサンプルが、ありあわせの段ボールから出てきたらどうでしょう。きちんと誂えた箱から出てきたらどうでしょう。中身の精度は同じです。でも、その会社の「仕事の丁寧さ」の伝わり方がまったく違います。担当者が上司に「この会社にしましょう」と言うときの、背中の押され方も違うはずです。
箱は、その担当者の「選んでよかった」という気持ちを支えます。BtoBのパッケージは、お客さまの会社の中にいる“味方”を守る道具でもあるのです。
ただし、箱だけ変えても続きません
ここは正直に言っておきます。
中小企業白書には、北海道のあるメーカーの事例が載っています。商品のパッケージを一新して、売上は一時的に伸びました。でも社長は「パッケージを変えるだけでは長続きしない」と考えました。そこで自社の存在意義から見直し、ブランドの約束を言葉にしました。パッケージのリニューアルは、その一番最後にしたそうです。
私が工場に来られたお客さまに、箱の仕様より先に「ブランドをどうつくるか」「どう売るか」の話をするのも同じ理由です。相談に来ただけなのに、と怪訝な顔をされることもあります。でも、約束が決まっていない箱は、ただの綺麗な箱で終わってしまいます。
明日からできること
大きな予算はいりません。順番が大事です。
まず、自社の「約束」を一文で書いてみてください。「うちは〇〇な会社です」「お客さまに〇〇を約束します」。これが言えないうちは、ロゴも箱も迷走します。
次に、お客さまの「人」が最初に手で触れるモノを一つだけ選んでください。サンプル、納品物、展示会の手土産、周年の記念品。全部をやる必要はありません。
そして、その一つを小さく、まずは少量でつくってみてください。担当者がどんな顔をしたか。上司に見せてくれたか。その反応こそが、BtoBブランディングの手応えです。
最後に
BtoBの世界では、長いあいだ「良いものをつくれば、わかってもらえる」と信じられてきました。私もそう信じてきた一人です。
でも、良いものであることは、もう当たり前になりました。その先で選ばれるのは、「この会社は、私たちのことを大切に考えてくれている」と感じさせてくれる会社です。
その「感じ」を、手で触れられる形にする。それが、私たちパッケージ会社の仕事だと思っています。
FAQ
Q1. BtoBの会社でも、パッケージにお金をかける意味はありますか?
A1. あります。BtoBでも、箱を開けて評価するのは担当者や決裁者という「人」です。調査でも、BtoBの買い手は取引先に強い感情を持つことがわかっています。ただし、まず自社の約束を言葉にしてから箱に進むのが順番です。
Q2. 全製品のパッケージを変える予算はありません。
A2. 全部を変える必要はありません。商談サンプルや記念品など、お客さまが最初に手に取る「一点」から小さく始めるのがおすすめです。
Q3. 何から相談すればいいですか?
A3. 具体的なパッケージデザインがなくても大丈夫です。「うちの会社は何を約束したいのか」という話からお聞かせいただき、一緒に考えていきます。
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