◎村上紙器工業所
「お客さま訪問記」シリーズ
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南海高野線「狭山駅」からほど近い閑寂な住宅街で、アルミ精密加工業をご夫妻で営む内山さん。2023年、長年培ってきたアルミ加工技術と表面加工技術をいかした金属製のかんざしの制作をスタート。そもそも、内山さんは和装が大好きで、趣味で着物を着る機会が多かったことにも起因するとか。2024年、アクセサリー事業部を設立。2025年には自社ブランド「CooZEN」を立ち上げた。いよいよかんざしを世の中にデビューさせるにあたり、箱が必要になった。そこで、知人を介して村上さんを紹介してもらい、ふたりの出会いが生まれた。
「ただモノをつくって箱に入れただけで売れるはずがない」って、最初に言われました。

じつは、南海高野線沿線の箱屋さんを探していました。
(村上)
内山さんとの出会いは、ビビディープ(https://atelier.vivideep.jp)の宇野さんからの紹介でした。メッセンジャーから「こんなひとがいるけど、会ってみてくれませんか」ということでした。
(内山)
そうです。宇野さんのご紹介で村上さんを知ったんです。お店が難波にあったころは買い物などでけっこう出入りしていたし、宇野さんが主催していたイベントにも参加していました。だからわたしが着物を好きなこと、自社ブランドでかんざしを売り出したいことなどは、ご理解いただいていたと思います。そこで、かんざしを売り出したいがどこかに良い箱屋さんがないかとお聞きしてみたら、村上さんの名前をあげてくださいました。さっそくホームページを見ました。そうしたら、「あれ?この会社のホームページを、前に見たことあるぞ」と、思ったわけです。じつは、以前に“南海高野線の沿線、箱屋さん”で検索してヒットしたので、村上紙器工業所さんのホームページを拝見していたんですよ。

(村上)
へー、そうでしたか。なぜ、また、南海高野線だったんですか?
(内山)
というのも、わたしは極力、会社に出向きたいたちなんですよ。
どういう会社なのか、どういうひとがやっているのかというのは、ホームページだけを見ても判然としないじゃないですか。だから、リアルで訪問したいんです。ご訪問する前に再度じっくりと村上紙器工業所のホームページを見たんですよ。すると、箱屋さんなのに、ブランディングを強烈に押し出していましたから、これはハードルが高いなあー、というのが第一印象でした。ただ、住所を見ると最寄駅が天下茶屋駅なので南海高野線で乗り換えなしで行けるので、そこはワタシが考えていた条件にぴったりでした。
(村上)
えっ、選ばれた理由は、そこですか??うちは「箱はブランディングのツールだ」という考え方で一貫して制作しているのが売りなんですよ(笑)。

桐箱と貼り箱の違いもよくわかっていないのに、いきなりブランディングの話ですもんねえ。
(内山)
箱には木でできた桐箱と紙箱があるくらいのことは知っていましたが、その用途の違いもよくわからないのに…そこへいきなり、「ブランディング」ですもんねえ。それに、そんなことに疎いワタシには、あまりにもホームページにブランディングにまつわる情報が溢れていて、押し流されそうになりました。ホント、情報の洪水のようでした。そのうえ、お会いした途端に、「箱さえつくったら売れると思うのは、よくある勘違いなんですよ」「じつは箱をつくってそれで終わりじゃないんです」と言うようなことを、こんこんと言われまして、まるで先生にお説教をされているような気分になりました。
(村上)
それは、失礼しました。でも、説教したつもりは毛頭ないんです。製造業で自社ブランドを立ち上げようという方の大半がそうなんですよ。良いものさえつくれば売れると考えがちで、どうやって売っていくかをあまりにも考えていないんですよね。そりゃ、うちも商売ですから、たくさん箱をつくってもらえればそれで良いんですけど。それじゃあ、無責任だし、その場限りのお付き合いで終わってしましいますからね。そんなやり方をやっていても、うちの特色や独自性がない。そこで、他の貼り箱屋さんとの違いを強く打ち出したくて勉強してきたのがブランディングなんです。
そのおかげでうちは競合他社と差異化ができて、独自のポジショニングを築けていると自負しています。ここまで来るのに時間はかかりましたが、ご相談に来られる方と同じ製造業仲間として、その経験や成果の一部でも共有できたら良いなあと思って、ついつい言ってしまうんですよ(笑)。説教なんかできる立場じゃないですから、とんでもないです。そんなつもりは一切ありません。

おかげで、じぶんがあまりにもブランディングを知らなかったことに気づきました。
(内山)
そのときはあまりにもわたしがそういうことに無知というか、素人同然でした。初見であのホームページの内容を理解するのが、無理だったせいだと思います。そこへ、まだブランドも立ち上げていないし、何もないのに、「大切なのはブランディングの意識だ」と、言われて、気分的に大いにへこんでしまったせいもあります。
じつは、村上さんを訪ねる前にも、1回へこんでいるんです。大阪府が無料でやっている起業相談に行ってみたんです。たしか、知財関係の部署でしたが、そこで言われたのも同じようなことでした。「名前を付けて商標を取って、箱をつくればなんとかなると思っているひとが山ほどいる」「大概は箱をつくってそれで満足して終わりです」「それでは、知名度がないからぜんぜん売れないんです」と。
これって、よく考えたら村上さんから言われたブランディングのことですよね。大阪府で言われてへこんで、村上さんに言われてへこんで。2回もへこんでしまったんです。でも、家に帰って気持ちをクールダウンして、考え直したんですよ。「このままではいかん」と、思いました。ブランディングって、本当に必要なの?と、思う気持ちもまだありつつ、ブランディングをあまりにも知らなさすぎるじぶんを省みる、良い機会を村上さんにいただいたのはチャンスでもあると思い返しました。
(村上)
それは、ありがとうございます。そうなんですよ。製造業のひとは“どうやって売るのか”をあまりにも考えていないですよ。良いものさえつくれば売れるわけでもないし、箱だけつくれば売れるものでもないんですよ。そこで、本気でブランディングやっていくならこのひとというわけで、クリエイティブディレクターでコピーライターでもある田中さん(今回のインタビュアーでもあるワタシ)を紹介させていただきました。

クリエイターをご紹介いただき、ブランディングをスタートできました。
(内山)
せっかくの宇野さんの口利きでもあるし、ほかの箱屋さんをあたり直すようなことはしたくなかったのと、プロに体当たりしながらじぶんも学ぼうと思い、田中さんと会うことにしました。そのことを宇野さんにお伝えすると、「えーっ!田中さんがやってくれるんですかー」って、驚かれていました。いろいろな経験をお持ちの田中さんをご紹介いただいたとはいえ、じぶんの知らない世界へ飛び込むのはなんというか、かなりの勇気が必要でした。村上さんのホームページを何度も読んで、これだけのことを書いていると言うことは村上さん自身もすごく勉強されているんだろうなあと納得できました。箱をつくるだけじゃなくて、その商品や会社全体を含めたストーリーを提案してもらえるだろうと期待も膨らみました。
最初の日にはアートディレクターの佐古田さんも同席していただき、緊張しながらの面談でした。そこでは、ブランディングのイロハと言うか、必要性を、おふたりから説いていただきました。
こちらはかなりタイトなスケジュールを申しあげたので、困惑されているようでしたが、仕事はスタートしました。ネーミング案をたくさんご提案いただき、商標なども調査し、どこにもない空前絶後のかんざしというコンセプトから「CooZEN」というネーミングに決めました。その後ロゴも完成し、パッケージもディレクションしていただき、とても素敵なパッケージが出来あがりました。村上紙器さんの仕事はとても丁寧で完成度が高く、ディティールまでスキのないつくりで、大変満足しています。

そして2026年3月に勇躍、京都のギフトショーに出展したのですが、さまざまなバイヤーの方から好意的なご意見も、決してそうではないご意見もたくさんいただきました。貴重な声に耳を傾け参考にしながらも、じぶんのペースでやっていこうと改めて思いました。今後とも決して本業を疎かにすることなく技術をさらに培い、技術者らしく細部の完成度を一段と極めたいと思っています。
田中さんが書いてくれた「ファクトリーアート」というコピーにふさわしい商品をめざし、お客さまの満足度を追求していきたいと思います。まだ写真を載せていただく段階ではないのですが、そこに見えているのは現在試作中のものばかりです。納得がいくまで何度もトライ&エラーしながら、完成度を上げていくんです。
そうそう、大阪狭山市のふるさと納税返礼品に選ばれております。村上紙器さんの箱とともに、「CooZEN」の商品をお客さまの手にどんどん届けていきたいですね。いろんなチャンスを生かしながら、少しずつ売り上げが伸びていけば嬉しいです。村上さん、今後とも良きパートナーとしてご支援ご指導ください。本日は話を聞いていただき、ありがとうございました。
(村上)
こちらそ、貴重なお時間を頂戴し、ありがとうございました。面白い話が聞けて有意義でした。引き続き、よろしくお願いします。

インタビュー&コピーライティング:田中有史(旅する田中有史オフィス)
撮影&デザイン:浪本浩一(ランデザイン)
有限会社内山鉄工所
代表取締役 内山 聡
〒589-0007
大阪狭山市池尻中1丁目35番6号
https://osayama-s.com/uchiyama/(内山鉄工所)
https://coozen.jp(CooZEN)
https://www.instagram.com/coozen.jp(Instagram)
訪問日:2026年08月07日(金)
公開日:2026年10月09日(金)
※掲載内容は取材時の情報に基づいています。

「つくる」より「売る」の難しさ
最初にお話をいただいたときに、同じ製造業として「自社ブランド」をつくる楽しさと難しさを強く感じました。こういった製造業からのご相談は結構あるのですが、モノづくりの会社は「つくる」ことはプロですが、「売る」ことは素人です。
今の時代、つくることよりも売ることがはるかに難しいです。パッケージ(貼り箱)はブランドと顧客を結ぶ大切な顧客接点/コンタクトポイントであり、「売る」にとってとても重要なものです。素敵な商品があり、箱からはじまってクリエイターに入ってもらうことでブランドに仕上がったと思います。
今後商品群が増えて、もっと売れるようにサポートさせていただければと思います。ありがとうございました。