+1,000円の箱が、ブランドに2,000円の価値を生む理由
公開日:2025年10月27日(月)|ブランディング
〜パッケージデザインを「資産」として扱う時代の経営思考〜

パッケージを変えると、ブランド資産価値が+2,000円?
ここに、商品単価2万円の高級コスメ商品があるとします。
A社は、単価@500円の比較的簡易なパッケージ。B社は、単価@1,500円の高級な貼り箱を採用しました。
しかし、その箱が高級感とブランドイメージを正しく伝え、そのブランドの信頼感によって販売価格を「+5,000円(=25,000円)」に設定できたとしたらどうでしょう。
パッケージの追加投資1,000円に対して、利益増加は5,000円。ROI(投資対利益率)は+400%になります。

これにプラス、仮にブランド資産価値(将来的効果)を「+¥2,000(推定)」だとすると、ブランド資産を含む「投資効果」です。
つまり、BROI=((5,000円+2,000円)−1,000円)÷1,000円×100=600%

ここでいうブランド資産価値(将来的効果)「+2,000円(推定)」ですが、これはどこから来たのでしょうか?
希望的観測?、それとも適当に出した数字でしょうか?
もちろん、これはシュミレーションの一つですが、希望的観測や適当に出した数字ではありません。
実は、この数字はロジカルに説明することが出来ます。

■ 1. 前提:ブランド資産価値は「将来の利益の源泉」
ブランド資産は、目に見えないけれど「将来の収益を高める力」です。
つまり BROIでいう+2,000円 は、「将来的に得られる追加利益の現在価値(正味現在価値:NPV的な考え方)」として算出します。
■ 2. 算出ロジック(例:パッケージ刷新による効果)
(1)リピート率・LTV(顧客生涯価値)の上昇
◆ 前提:高級な貼り箱による心理的効果
まず、高級な貼箱を採用することで、
- 商品への「信頼感」が高まる
- 「高級感」「満足度」「贈る喜び」などの情緒価値が上がる
結果として、リピート率(再購入率)が上昇します。
◆ 数値モデル化の例
| 項目 | 通常 | 高級貼箱導入後 | 差分 |
| 平均購入回数 | 2回 | 3回 | +1回(+50%) |
| 1回あたりの利益 | 5,000円 | 同じ | ー |
| 総利益 | 10,000円 | 15,000円 | +5,000円 |
つまり、パッケージの影響で顧客生涯利益(LTV)が+5,000円増加したという仮定です。
◆ ブランド資産効果への帰属
ここがポイントです。
実際には、顧客がリピートした理由は「商品そのもの」「広告」「口コミ」「パッケージ」など、複数の要因が絡んでいます。
その中で「パッケージの高級感による信頼・満足向上」が占める影響を、仮に20%(=1,000円投資に対して2,000円の価値)と見積もります。
計算式:
リピートによる将来利益増加:+5,000円
× パッケージが貢献した割合:40%(仮定)
= 2,000円(ブランド資産効果)
この「+2,000円」が、高級貼箱がもたらすブランド資産効果= “無形の経済的リターン” です。
◆ まとめ:1個あたりの投資対効果構造
| 項目 | 金額 |
| 追加パッケージコスト | −1,000円 |
| 即時の価格プレミアム(例:+5,000円) | +5,000円 |
| 将来のブランド資産効果(リピート等) | +2,000円 |
| 総合効果(BROI) | +6,000円 −1,000円=+5,000円利益 |
◆ 結論
この計算は、「高級貼箱による顧客関係の深まり(信頼・リピート)を金額換算した」というブランド資産価値の試算ロジックです。
つまり、“箱に投資することで、単発利益ではなく「将来利益(信頼・再購入)」をも獲得する” という経営ロジックを数値で示したものです。

(2)口コミ・紹介による新規顧客獲得効果
ブランドイメージが向上すると、口コミやSNS投稿が自然発生します。
高級コスメ領域では、顧客1人の口コミが新規1人を連れてくるケースも多い。
例えば:
- 新規獲得コスト(広告費換算)が平均2,000円/人
- ブランド体験による口コミで1人獲得できたら、広告費2,000円を節約したのと同等。
この「節約できた広告コスト=ブランド資産」として、+2,000円相当と見なせます。
◆ 前提:広告で新規顧客を獲得するコスト
高級コスメブランドなどでは、1人の新規顧客を獲得するために広告費や販促費が平均 2,000円/人 かかる、というのが前提です。
これは、いわゆる顧客獲得単価:CPA(Cost per Acquisition)の考え方です。
◆ 口コミで新規顧客が生まれる
ブランド体験(パッケージや開封体験など)によって感動が生まれ、顧客がSNSで投稿したり、友人に勧めたりして、新しい顧客が1人自然に来たとします。
◆ 広告費換算での“節約効果”を金額化
その「口コミ経由の1人」は、本来なら広告費2,000円を使って獲得していたはずの顧客です。
つまり、企業にとっては2,000円の広告コストを節約できたのと同じこと。
この節約分を「ブランド体験が生み出した価値」として計上します。
◆ 式で表すとこうなります
ブランド資産価値=広告換算の新規獲得コスト(CPA)
例えば、
- 広告CPA:2,000円
- 口コミで1人新規が来た
ブランド資産価値=2,000円×1人=+2,000円
◆ 経営的な意味
これは「実際にキャッシュが入った」というよりも、将来的なコスト削減=ブランドの資産的効果を金額換算している考え方です。
つまりこの+2,000円は、「広告なしでも顧客を生むブランド力」の経済的価値を表しています。
(3)価格維持・値崩れ防止のプレミアム効果
◆ 前提条件
- 商品の定価:20,000円
- 通常は売るために10%値引き(=2,000円引き)して販売している
- 強いブランド力によって、値引きせずに定価で販売できた
◆ 計算ロジック
ブランドによる価格維持利益(=無形利益)
= 「通常必要だった値引き額」
= 2,000円
つまり、ブランド力がなければ1個あたり 18,000円でしか売れなかったものが、ブランドイメージによって 20,000円で売れるということ。
◆ 経営的な意味
この「2,000円」は単なる “値引き差額” ではなく、ブランドが価格競争を回避し、利益を守った証拠です。したがってこれは、「将来的な価格維持力」=ブランド資産価値のひとつ。
別の言い方をすると:
ブランドは「利益率を守る防波堤」であり、値引きを必要としない状態そのものが、すでに “見えない利益” を生み出しているのです。
◆ まとめ
| 項目 | 弱いブランド | 強いブランド |
| 定価 | 20,000円 | 20,000円 |
| 実売価格 | 18,000円(10%値引き) | 20,000円(定価販売) |
| 売上差額 | −2,000円 | ±0円 |
| 無形利益 | 0円 | +2,000円(ブランドが守った価値) |
要するに、「値引きせずに売れた」という事実そのものが、“ブランドが2,000円分の価値を生み出した” という経済的解釈なのです。

■ 3. ブランド資産価値の構成要素(例)
つまり、短期の売上効果だけでなく、
- 顧客維持(Retention)
- 新規獲得(Acquisition)
- コスト削減(Efficiency)
といった 複合的な中長期効果 を金額に換算して合算します。
この「+2,000円」は、こうした複合効果の1箱あたりの平均現在価値というわけです。
| 項目 | 指標例 | 定量化の方法 |
| 再購入率 | 顧客リピート率 | 継続購入によるLTV上昇分 |
| 口コミ・紹介効果 | NPSスコア | 新規顧客獲得コスト削減分 |
| 価格耐性 | 値上げ許容率 | マージン拡大効果 |
| 信頼・ブランド好感度 | 調査・SNS評価 | 広告換算価値 |
| 営業効率 | 商談成約率 | 販促コスト削減分 |
◆ まとめると
経営判断としての意味

この+2,000円のブランド資産価値は「感覚」ではなく、
- 顧客の生涯価値(LTV)
- 値引き抑止力
- 口コミ効果
などの将来的なキャッシュフローの増分を、商品1個あたりに“割戻し”した数字。
だから、ROIにこの「2,000円」を足すことで、単なる短期収益でなく「ブランド経営としての投資効果(BROI)」が見える化できるわけです。

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