コンセプトとは?それがあるブランドはなぜ強いのか?
公開日:2025年11月21日(金)|ブランディング

強いブランドに共通する見えない武器 ── “一貫したコンセプト” の正体
コンセプト(Concept)とは、物事や企画における「全体を貫く基本的な概念・考え方」のことです。
単なる「アイデア」や「思いつき」ではなく、「誰に」「何を」「どのように」提供するかという「骨子(骨組み)」であり、迷った際の判断基準(軸)となるものです。
- 広義(一般的): 概念、観念、思考の枠組み。
- 狭義(ビジネス・制作): 企画の方向性を決定づける「核となる独自の視点」や「提供価値の定義」。
語源と構成要素
1. 語源と定義
語源はラテン語の「conceptum(心に抱かれたもの)」および「concipere(取り込む、妊娠する、抱く)」に由来します。
これが英語のConceptとなり、「概念」「着想」という意味で定着しました。 日本の辞書的定義では「概念」「観念」「(広告・商品開発などの)一貫した基本姿勢」とされています。
2. 構成要素(ビジネス・マーケティングにおける定義)
コンセプトは一般的に以下の要素を統合したものを指します。
- ターゲット(Who):誰のためのものか
- ベネフィット(What):どのような価値・体験を与えるか
- 手段・独自性(How):どのような方法でそれを実現するか
これらが、一貫して繋がっている状態が「コンセプトが明確である」と評価されます。
【気をつけるべき点】
1. 「テーマ」との違い 混同されやすい言葉に「テーマ」がありますが、役割が異なります。
- テーマ(主題): 「何について扱うか」(例:愛、戦い、春の新作)
- コンセプト(切り口): 「そのテーマをどういう視点や方針で表現するか」(例:悲劇的な愛、泥臭いリアルな戦い、大人のための春)
2. 「アイデア」との違い
- アイデア: 断片的な着想やひらめき(点)。
- コンセプト: アイデアを束ね、方向付けした骨組み(線・面)。
3. 業界によるニュアンス差 哲学分野では厳密な「概念(個々の事象から共通項を抽出してまとめた意味内容)」を指しますが、広告・デザイン・建築分野では「作品の意図」「設計思想」を指すことが一般的です。
企業が陥りがちな “勘違いコンセプト” とは?
主に「顧客不在の自己満足」と「手段の目的化」の2点に集約されます。
多くの企業が、コンセプトを「かっこいいスローガン」や「高機能なスペックリスト」と混同し、本来の目的である「顧客にとっての価値定義」を見失うケースが頻発しています。
陥りがちな4つの「勘違いコンセプト」
1. 「キャッチコピー」をコンセプトだと信じ込む
もっとも多い勘違いです。耳障りの良い言葉を並べただけで満足し、中身(戦略)が空洞化するパターンです。
◆ 勘違い:「未来を、その手に。」「感動をあなたに。」
- これらは表現(Output)であり、コンセプト(骨組み)ではありません。
◆ 正解:「30代の忙しい共働き世帯に(Who)、家事時間を1日30分短縮する(What)、AI自動制
- これがコンセプトです。これを魅力的に言い換えたのがキャッチコピーです。
2. 「高機能=良いコンセプト」だと思い込む(スペックの罠)
「すごい技術」や「多機能」があれば売れると信じ込み、**「顧客がそれでどう幸せになるか」**が抜け落ちているパターンです。
◆ 勘違い:「業界最高解像度の4Kカメラ搭載、防水、軽量、AI補正付きのドローン」
- これは仕様書(スペック)です。
◆ 正解:「素人でも(Who)、プロ並みの映画のような空撮が(What)、ボタン一つで撮れるドローン(How)」
- 顧客は「高解像度」そのものではなく、「綺麗な映像が撮れる体験」にお金を払います。
3. 「やりたいこと」を押し付ける(プロダクトアウトの誤解)
創業者の想いやこだわりが強すぎて、市場のニーズを無視してしまうパターンです。「良いものを作ればわかってもらえる」という独りよがりに陥ります。
◆ 勘違い:「当社が長年温めてきた、こだわりの伝統製法で作る〇〇」
- 顧客にとって、そのこだわりが何のメリットになるかが翻訳されていません。
◆ 正解:「健康志向だが味にはうるさい人に(Who)、罪悪感なく満腹感を提供する(What)、伝統製法の低糖質パン(How)」
- 「こだわり」は手段であり、目的(価値)ではありません。
4. 「抽象的すぎて誰も否定できない」言葉に逃げる
「安心・安全」「高品質」「お客様第一」など、誰も反対しないが、何も言っていないのと同じ言葉をコンセプトに据えてしまうパターンです。これにより、現場は何を優先すべきか判断できなくなります。
良いコンセプト vs 勘違いコンセプト
| 項目 | 勘違いコンセプト(Bad) | 良いコンセプト(Good) |
| 主語 | 企業・製品(私が、この製品は) | 顧客(○○な人が、○○になれる) |
| 内容 | 抽象的、情緒的、スローガン | 具体的、機能的、ベネフィット |
| 焦点 | 機能(Feature)、仕様 | 便益(ベネフィット)、解決策 |
| 判断 | 「かっこいいか?」 | 「誰が喜ぶか? 儲かるか?」 |
| 例 | 「世界最速のエンジンを搭載」 | 「移動時間を書斎に変える車」 |
強いブランドが必ず持っている “本物のコンセプト条件” とは?
強いブランドが持つ「本物のコンセプト」には、単なる言葉遊びで終わらせないための明確な条件があります。それは、顧客への約束であると同時に、「迷ったときに立ち返る “判断基準” として機能しているか」という点です。
本物のコンセプト 3つの条件
強いブランドのコンセプトは、この3条件を満たしています。
- 一貫性(Consistency): 商品、接客、店舗、Webサイトなど、あらゆる顧客接点で「同じ空気感・価値」が感じられること。
- 具体性(Specific): 「誰の」「どんな負(不満・不安)を」「どう解決するか」が明確で、独自性があること。
- 社内浸透(Internal Compass): 顧客へのアピールだけでなく、社員が「やるべきこと」と「やってはいけないこと」を判断する羅針盤になっていること。
具体的な成功事例
「本物のコンセプト」がどのように現場に落ちているか、代表的なブランドで見てみましょう。

1. スターバックス:『サードプレイス(家庭でも職場でもない第三の場所)』
単に「美味しいコーヒーを売る」のではなく、「居心地の良い場所」を提供しています。
a) 一貫性のある施策:
- 空間:回転率を上げるための硬い椅子ではなく、長居したくなるソファを配置。
- 接客:マニュアル通りの対応ではなく、カップへのメッセージ記入など「人間味のある会話」
- Wi-Fi/電源:「仕事や勉強もできる場所」としてのインフラ整備。
b) 判断基準:「それはサードプレイスらしいか?」で新サービスや内装を決定しています。
2. Soup Stock Tokyo:『世の中の体温をあげる』
「スープ専門店」は業態であり、コンセプトは「体温をあげる(心身を温める)」ことです。
a) 一貫性のある施策:
- 商品: 保存料無添加の優しい味。
- 接客: スタッフは「体温計」となり、客の顔色を見て「お疲れですか?」と声をかけるなど、心のケアも意識。
- 活動: 0歳児への離乳食無料提供など、社会的に「冷たい」部分を温める活動を展開。
3. 無印良品:『これでいい(理性的な満足感)』
「これがいい(強い嗜好性)」ではなく、「これでいい」という抑制の効いた品質と価格を目指しています。
a) 一貫性のある施策:
- デザイン:ブランドロゴを排除し、装飾を削ぎ落とす。
- 工程:紙の漂白プロセスを省き、素材そのままのベージュ色をパッケージに採用(コスト削減と自然志向の両立)。
- 商品群:食品から家まで、あらゆる商品が「主張しすぎず、生活に馴染む」トーンで統一。
【気をつけるべき点】
- 言葉の美しさにこだわらない:かっこいい英語や抽象的なポエムである必要はありません。泥臭くても「我々は何屋なのか」が定義されていることが重要です。
- 変えない勇気:時代に合わせて戦術(商品や広告)は変えても、コンセプト(核)は安易に変えてはいけません。コロコロ変わるブランドは信用されません。
コンセプトあるブランドは、なぜ強いのか?
ブランド価値が明確に伝わるため、顧客に選ばれやすくなる
コンセプトが弱い企業は、意思決定がブレ、商品もブランドも営業もマーケティングも“なんとなく”の作業になり、市場で埋もれます。
逆に、強いコンセプトは「選ばれ続ける理由」をつくり、経営のあらゆる部門を一つの方向へ束ね、利益構造まで変えてしまいます。
- コンセプトは “何をやり、何をやらないか” を決める判断基準になる
企業が迷う最大の原因は、「正しい基準」がないことです。コンセプトがないと、商品開発・値付け・広告・パッケージ・顧客対応…すべてが場当たり的になります。
強いコンセプトは、経営判断を高速化し、社内の迷いを消します。 - 顧客は “商品そのもの”ではなく、“意味” を買っている
同じ機能の商品が溢れる市場で、顧客が選ぶのは「そのブランドが持つ態度・意思・意味」です。コンセプトは、この“意味”の核です。
例:
アップル →「人間の創造性を解放する」
スターバックス →「第三の場所」
ティファニー →「愛を贈る儀式」
ビジネス活動に一貫性が生まれ、長期的な成長と競争力の源泉となる
- コンセプトは組織を “ひとつの意思” に束ねる
社長、営業、デザイナー、製造、広報。全員が別の方向を向いていては、企業は強くなれません。コンセプトは「企業の北極星」として、全員の判断を揃え、ブレをなくします。 - 投資対効果(ROI)を最大化する “選択と集中” が可能になる
コンセプトがある企業は、広告や開発でムダな投資をしません。
理由:何を伝え、誰に届け、何を約束するブランドかがハッキリするため、資源配分が合理化されるからです。 - コンセプトは、“差別化ではなく唯一性” を生む
価格・機能で差がつかなくても、「存在理由」が強い企業は選ばれます。
コンセプトは “他社がコピーできない領域” をつくり、長期的な競争優位を生みます。
【気をつけるべき点】
- コンセプトは “綺麗な言葉” ではなく、“経営の覚悟の翻訳” である。
- 社長が腹落ちしていないコンセプトは、必ず内部で形骸化し、機能しない。
- コンセプトは外部向けよりもまず “社内向け” に強く効く。
- コンセプト策定は専門家の伴走が有効だが、最終的な答えは企業自身の内側にある。
- 短期売上のためだけに作ったコンセプトは、必ず崩壊する。
明確なコンセプトは、ブランドの存在意義を定義する
社内外の指針となることで、顧客の心をつかみ、競争の激しい市場で生き残るための強固な基盤を作り上げます。商品/ブランドにとって、コンセプトという「軸」があるのとないのとでは運令の差が開きます。

なぜ強いブランドは “化粧箱” まで考えているのか ── コンセプトとパッケージの連動
そのコンセプトがあると商品/ブランド展開においても、パッケージデザインやパッケージそのものにも活かされます。
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