「ムダ=余白」が生みだす創造性
公開日:2025年09月12日(金)|ブランディング
効率だけでは利益は伸びない ― 感情価値の投資効果
本田宗一郎らを贔屓筋に持つ“伝説の舞妓”が語る、トップに立つ人の共通点「彼らはムダを好んでいた」という記事を読みました。
この記事では、本田宗一郎ら一流経営者に愛された “伝説の舞妓” が語る、トップに立つ人の共通点が紹介されています。
彼らは成果や効率ばかりを追うのではなく、一見ムダと思える余白の時間や遊び心を大切にしていました。無駄話や余興の場にこそ、信頼関係を築き、人を惹きつける魅力や新しい発想が生まれるからです。
経営とは数字や戦略だけでなく、人の心を動かす力が不可欠です。ムダのない経営は一見合理的に見えても、人間味を失い組織の活力を削ぐ危険があります。トップに立つ人ほど「余白が価値を生む」という感覚を持ち、あえてムダを許容することで、長期的な成長と信頼を手にしていたのです。
現代の会社や社会は「効率」「成果」「合理性」を絶対的な価値として扱いがちで、「ムダ=余白」を徹底的に削ぎ落とそうとします。これは一見合理的ですが、実は大きなリスクもはらんでいます。

余白は心の呼吸。そこからブランドの感情価値が生まれる
1. 合理主義の行き過ぎがもたらすもの
- 短期志向化:すぐに成果が出ることしか評価されず、中長期の投資や文化づくりが軽視される。
- 人間関係の希薄化:雑談や寄り道を「生産性がない」と切り捨てることで、信頼関係やチーム力が弱くなる。
- 創造性の低下:遊びや余裕がない環境では、斬新なアイデアやイノベーションが生まれにくい。
2. なぜ余白が軽視されるのか
- 数字に直結しにくいため、「投資」と見なされず「コスト」として扱われる。
- AIやDXによる自動化が進み、「無駄をゼロにすること」が進歩だと誤解されている。
- グローバル競争の中で「スピード」や「成果主義」が優先されている。
3. 経営に必要な視点
- 余白は “無駄” ではなく “無形資産”:信頼・ブランド・文化といった、目に見えにくいが長期的に企業を支える力を育てる。
- 合理性は「骨格」、余白は「血と呼吸」:合理性だけでは硬直した組織になり、余白だけでは方向性を失う。両者が揃って初めて生命力のある経営となる。
経営にとって大切なのは「どのムダを削り、どの余白を守るか」の見極めです。
削ってはいけない余白まで排除してしまうと、組織は確かに効率的に見えますが、実は内側から脆さを増していきます。
区分 | 削ってはいけない余白(投資すべき) | 削ってよいムダ(削減すべき) |
人間関係 | 雑談・社内イベント・顧客との懇談 → 信頼・文化・ブランド資産を育てる | 不要な会議・重複した報告書類 → 時間と労力の浪費 |
創造性 | 実験的プロジェクト・遊び心のある試み → イノベーションの種になる | 成果が出ないのに惰性で続く施策 → 「慣習だからやる」業務 |
組織運営 | 教育・研修・失敗を許容する余裕 → 人材育成と長期的競争力に直結 | 不要な承認フローや過剰な管理 → 現場を縛り主体性を奪う |
時間設計 | 考えるための余裕時間・休暇 → 持続性・創造性を確保する | 常態化した残業・待ち時間 → 生産性を下げ士気も失う |
経営判断 | 将来に向けた長期投資(ブランド・R&D) → 短期利益以上の価値を生む | 成果に直結しない“見栄え投資” → 過剰接待や不要設備 |
ポイントは、「短期的に数字に出にくいが、長期的に資産になるもの」は守るべき余白。
逆に「惰性や慣習から続けているだけのもの」は、本当に削るべきムダです。

これを、商品パッケージで考えると?
パッケージデザインに思い切った投資をすることは、ムダなのでしょうか?
「商品パッケージへの投資」が “ムダ” なのか、それとも “余白=無形資産を育てる投資” なのかは、経営視点でどう捉えるかによって大きく変わります。
一見ムダに見える箱が、ブランドの記憶をつくる
1. パッケージ投資が「ムダ」に見える理由
- 短期の損益計算書では「コスト」として計上される。
- 中身(プロダクト)の品質が同じなら「箱にお金をかける意味はあるのか?」と見られやすい。
- 数字で直接ROIを測りにくいため、経営会議で説明しづらい。
2. パッケージ投資が「余白=資産」になる理由
- ブランド体験:開封体験や手触りなど「感情的価値」を届けることで、価格以上の満足度を生む。
- 差別化:機能や中身が似た競合商品と比べ、パッケージで“選ばれる理由”をつくれる。
- プレミアム価格:ティファニーの箱やAppleの箱のように、パッケージが価値の一部となり、高価格設定を正当化できる。
- 口コミ・SNS拡散:映えるパッケージは購入体験そのものが広告になり、無形資産として顧客接点を増幅する。
3. 判断基準:「ムダ」か「投資」か?
◯ムダなパッケージデザイン投資
- 競合や業界トレンドをただ真似ただけ
- ブランド戦略と無関係な豪華さ
- コスト増が価格転嫁できず、利益を圧迫
◯投資となるパッケージ
- ブランド理念や世界観を体現する
- 消費者体験を高め、価格・リピート率に貢献する
- 長期的に「ブランド資産」として残る
パッケージ投資は「ムダ」ではなく、余白を戦略的に活かした “無形資産への投資” になり得ます。
むしろ「合理性だけで最適化したパッケージ」はコスト削減はできますが、ブランド価値を削いでしまい、長期的には脆い経営を招く可能性があります。

余白を纏ったパッケージが、商品を “ブランド体験” に変える
パッケージ投資:ムダ vs 資産
観点 | ムダになる場合 | 資産になる場合 |
戦略性 | トレンドや競合を真似ただけで、自社のブランド戦略と無関係 | → ブランド理念・世界観を体現し、戦略と一貫性がある |
顧客体験 | ぱっと見は豪華だが、顧客の感情に響かない | → 開封・手触り・デザインが「感情的価値」を高める |
価格への影響 | コストの認識から離れられず、価格転嫁もできない | → プレミアム価格を正当化し、利益率を上げられる |
差別化 | 中身と切り離され、単なる装飾にとどまる | → 競合商品との違いを明確化し、選ばれる理由になる |
拡散効果 | 誰も話題にせず、印象に残らない | → SNSや口コミで「箱体験」が共有され広告効果を持つ |
時間軸 | 短期的な見栄えで終わり、ブランドに残らない | → 長期的に「ブランド資産」として積み重なる |
ポイントは、「ブランド体験に一貫性を持って寄与するかどうか」。同じ費用でも、戦略に沿っていれば「資産」、場当たり的であれば「ムダ」になります。
逆に投資と考えて、ブランドの世界観/ブランドイメージを伝えるパッケージにすることで、上代価格を上げることも可能。かけた費用以上の投資効果(ROI)で利益を増やせることにもなる。
そして何よりもブランドイメージの積み重ねが、あなたの会社にとってブランド資産になっていくのです。それをムダ(=先行の負担)と取るのか、中長期的に見たブランド資産形成の先行投資(=余白)が価値を生むと考えるかです。
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