貼り箱はデザイン先行だと中々上手くいきません

公開日:2018年12月22日(土)デザイン

貼り箱はとても繊細で、かなりシビアな作り方が要求されます

以前、デザイナーの方からご相談いただいた貼り箱案件。そのときにはすでにパッケージデザインが出来ていて、「こんな貼り箱がつくれますか?」というものでした。

デザイン案を確認しましたが、貼り箱として作れなくはないですが、構造的に量産化(数千個)が難しく時間がかなりかかるということと、何といっても先方の想定する予算とは全く合わないということです。

感覚的にみても、先方のご予算の2〜3倍以上はかかる感じです。しかも、もしその通りに作るとなると恐らく納期は1年かかっても不可能。
ご予算的にも納期的にも、先方のご希望とかけ離れています。しかし、こういう案件は時々入ってきます。

多くの場合、自分の思い描く理想のパッケージデザイン(特に箱の形状)が先行して、現実がともなっていない典型的なケースです。経験の浅い若いデザイナーだけに限らず、ベテランのデザイナーの方でもよくあります。

多くはIllustratorやCADソフトを使って、Macの画面上だけでデザインするケース。もしくはある程度経験のある方で、ボール紙などを使って実際にダミーを作られるケース。

ダミーを作るのはまだいいのですが、あくまでも「1個づくり」で量産することを考えていない「工作」に近い状態です。デザイナーの方で貼り箱の構造や加工の仕方、特に量産に詳しいという方は、私の知る限りほぼおられません。

デザイナー人脈は、面識があるという方を合わせると数百人は知っていますが、今までで「この人は貼り箱のことを知っている」と感じたのはお一人だけです。
一般的な四角い「C式(かぶせフタ式)」の貼り箱なら、素材の選び方さえ間違わなければ量産も難しくはありません。予算面でもトムソン箱のように安価ではありませんが、とんでもない金額にはなりません。

ただし変形だったり例え四角い箱でも複雑な構造になると、自動機(量産機械)にはかからないので全て手加工での作業になります。ポイントは、一見そんなに難しいように見えなくても、実際に貼り箱として作るとなるとかなり細かな部分も考えなければなりません。

それは中芯として使うボール紙がトムソン箱に使うコートボールなどと違い、かなり厚みがあることです。一般的なトムソン箱(組み箱)だと、ボール紙は「270g〜厚くても400g/平方メートル」程度、厚みでいうと「0.5mm」前後くらいです。それが貼り箱だと「1〜2mm」の厚みがあります。

弊社では主に「1.5mm厚」のボール紙を使いますが、箱によってはこれと他の厚み(1mmや2mm)を組み合わせる場合もあります。そして何よりも、ボール紙の上から素材(基本的には紙)を接着剤である糊(ニカワ、膠)で貼っていきます。ニカワとは簡単にいうと工業用のゼラチンで、主に牛や豚の骨や皮から抽出する動物性のゼラチン物質です。

ニカワは高温にすることで液状になり冷えると固まるという性質から、世界中の貼り箱は基本的にニカワを使って作られます。
このニカワの取扱いは温度や濃度管理の難しさや、貼り紙の厚みや堅さなど様々な項目をクリアする必要があり、自動機で量産する場合はもとより、複雑な構造の貼り箱を作るときの手加工の難しさがあります。

素材を貼るときは基本的にボール紙を包み込むように貼りますが、どうしてもつなぎ目が出てきたりもします。それらを考えながら、特に角部分やボール紙の接合部分などをいかに美しく魅せるか。
そして実際には人の手で作るので個体差もありますし、不具合が起こるような想定できる様々な要因を考えて設計をしないといけません。

中芯のボール紙を木型を作ってトムソン抜きすることも多いですが、合口(あいくち:フタとミ(下箱)の寸法差)や角部分などは、「0.1mm」単位で寸法調整をします。そして紙を中心とした貼る素材については、どの素材を選ぶかによって貼り箱の品質(仕上がり)が決まると言っても過言ではありません。

素材選びは、最も重要な要素の一つです。加工のしやすさはもちろん、あとで角部分が浮いていないかや擦り傷が付きやすいとか付いたとしても目立ちにくいとか。あとから起こりそうな色々なことを想定して素材を選ばないと、大変なことになってしまいます。

他社が作った貼り箱で、トラブルからクレームになって困った企業が、弊社へ相談に来られることがあります。大抵は「素材選びが間違っている。そもそもこの紙を使うと大変!!」、「設計がちゃんと出来ていない。これだとあとで不具合を起こす。」というのことがよくあります。

貼り箱はとても繊細で、かなりシビアな作り方が要求されます。
そのあたりは、やはり知識と経験が必要です。

これらのことから構造(デザイン)的に複雑な貼り箱を作るとなると、簡単には出来ません。それには多大なコストと時間が必要になります。
それをパッケージデザイン優先で考えてしまうと、デザイナーにとってもクライアントにとっても、現実的なご予算や納期、そして覚悟が相当必要になってきます。
パソコン上でデザインすることや、ダミーを一つ作るのとは全く違うのです。

「餅は餅屋」といいますが貼り箱を作るのは我々の専門ですので、デザイナーの方には貼り箱のデザインを考える初期の段階で、まずはご相談をいただけると一番いいと思います。

一旦デザインが完成してしまうとそれが前提になるので、実際にそれを作ることが出来るのか?、作れるとしても予算と納期は?…..という問題に直面します。もちろん可能ならいいですが、大抵は条件的に難しい、もしくは無理な案件になります。
まずは私たちにご相談いただくけると、スムーズに話が運ぶ確率が高まるでしょう。

どうぞ、よろしくお願い致します。

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