下請けから共創者へ。製造業ブランディングの転換点

公開日:2025年08月29日(金)ブランディング

意思を運ぶ箱

触れて感じる哲学——言葉を体験に変えるデザイン

村上紙器工業所のブランドステートメント「意思を運ぶ箱。」をつくり上げた田中有史氏(コピーライター/クリエイティブディレクター)と浪本浩一氏(デザイナー/アートディレクター)の役割は、単なるコピーやデザインの制作に留まりません。それ以上に深い意味を持っています。

1. 「言葉」以上のブランド哲学の抽出

田中有史氏は、単なるキャッチコピーを作ったのではなく、村上紙器工業所の「存在意義」や「哲学」を言葉として凝縮しました。

  • 「貼り箱=単なる入れ物」ではなく「ブランドの意思を運ぶ存在」と再定義。
  • 会社自身がまだ言語化できていなかった価値を言葉にし、社内外で共有できる指針を提示。
    つまりコピーは広告表現ではなく、経営理念に近い「核となる言語資産」になっています。

2. 視覚と言語をつなぐ「体験設計」

浪本浩一氏は、ビジュアルデザインの範囲を超えて「体験」としてのブランドを形にしました。

  • 文字やロゴだけでなく、質感・余白・色彩といった要素により「意思を運ぶ箱。」を感じさせる世界観を構築。
  • 単なる装飾ではなく、顧客が触れた瞬間にブランドのストーリーが伝わるように設計。
  • つまり「目で読むコピー」と「手で感じるデザイン」が一致する体験を実現。

3. 経営資源としての「言語 × デザイン」の融合

この二人の仕事は「コピーライティング+デザイン制作」という発注対応ではなく、村上紙器工業所がこれから進む方向を ブランド資産として固定化 する行為でした。

  • 経営者・社員が共通の言葉で語れる「旗印」を持った。
  • 取引先や顧客に対して、感覚的ではなく理念的に説明できるようになった。
  • これにより「価格で選ばれる下請け業者」から「ブランドを共創するパートナー」へとポジションが変わるきっかけになった。

4. 「つくる人」から「ブランドの共同設計者」へ

したがって田中氏と浪本氏の貢献は、単なる広告クリエイティブの提供ではなく、村上紙器工業所の存在を再定義した共同創業的な役割ともいえます。
彼らは「意思を運ぶ箱。」という言葉とビジュアルを通じて、

  • 経営理念の言語化
  • ブランド体験の設計
  • 長期的なブランド資産の形成
    にまで踏み込んでおり、その意味で 会社の未来を形づくる共作者 なのです。

意思を運ぶ箱、下請けから共創者へ。製造業ブランディングの転換点
下請けから共創者へ。製造業ブランディングの転換点
USBメモリケース/パッケージ/化粧箱

町工場も、言葉とデザインでブランドになる

これは「製造業がスペック一辺倒」を根底から変えたと思います。製造業、特に末端の町工場がこんなブランドステートメントを持つ意味とは?


製造業が「スペック一辺倒」から抜け出す意味

多くの町工場は「技術力」「品質」「納期」「コスト」という数値化可能なスペックを武器に競争してきました。しかしそれは容易に比較され、価格競争に陥る構造でもあります。
そこに「意思を運ぶ箱。」というブランドステートメントを掲げたことは、

  • 機能価値(スペック)から情緒価値(ブランド体験)へ のシフト
  • 「下請け」ではなく「ブランド価値の共創者」という立場への変換
  • 工場=モノをつくる場所 → 工場=ブランドの哲学を形にする場所
    を示しています。

つまり町工場であっても「思想」を語れるし、それが競争力になる──その前例をつくったのです。

ブランドステートメントが持つ社会的な意味

特に製造業にとって、ブランドステートメントを持つことは以下の意味を持ちます。

  • 社員にとっての誇りの源泉:単なる受注ではなく「ブランドの意思を託されている」と感じられる。
  • 取引先への差別化メッセージ:他社が語れない「理念」を持つことで、価格や納期だけで選ばれなくなる。
  • 産業全体への波及効果:町工場も「哲学やデザイン」で勝負できることを示し、次世代の製造業のロールモデルとなる。

田中有史氏の思い(コピーライター/クリエイティブディレクター)

コピーライター・田中有史氏の深掘り——「勝手に作った」その裏側

きっかけは「工場見学」と “直感”

2019年のある日、浪本氏の媒介で工場見学が実現しました。その際、田中氏は会社のホームページを見て以下のように感じていたそうです:

「ハードの会社でありながら、ブランド論を書きまくってて、同業他社との差別化をソフトでやろうとしている。その姿勢は面白かったけど…言いたいことの核が見えない」

この「気になった」という直感が、コピー制作の出発点でした。

「勝手にコピー」を生んだ熱意

依頼があったわけではないのに、帰宅後すぐに複数のキャッチコピーをノートに書き起こしたとか。

「その夜7時か8時ぐらいでした。熱いうちにこんなん書いたんですけど、って。」
そのコピー案が、「ハートのあるハード」「考える手」「箱に魂、込めてます」などだった。

村上社長の言葉からも熱気が伝わります:

「驚愕した…感動よりも先に、『ベンツぐらいギャラいるやろか』って…(笑)」

コピーを通じた社内の「言語化」と方向性の提示

工場見学後に再提案されたコピーは、まさに会社の核心を言語化するものでした。

「依頼主と村上紙器の真ん中にある“箱”に主観を置いた方がいいなと。…“企業、依頼主の意思を運んでいる”という視点が見えた瞬間、ああ、できた!と思いました」

この「箱」を媒介として、”意思を運ぶ” という言葉は、単なる言葉以上の「ブランドステートメント」として形成されました。

コピーがもたらした嬉しい反響

公開後、すぐに応募者が現れたエピソードも印象的です:

「神戸から女性3人連れのお客さま…“意思を運ぶ箱”が目に止まって、“ここしかない”と」

この反応は「言葉が本当に届いた」こと、そしてコピーが企業の魅力を伝える確かなツールになった証ではないでしょうか。

※出典:ある日、コピーライター田中有史が、町工場のキャッチコピーを勝手に作った件
町工場のブランディングにつながるキャッチコピー

浪本浩一氏の思い(デザイナー/アートディレクター)

デザイナー・浪本浩一氏の深掘り——「体験としてのデザイン」

  • メビックでの関係性構築
    浪本氏は15年以上前から村上紙器工業所のホームページをデザインしていて、「貼り箱にかける想い」を理解していたパートナーでした。
  • 言葉と工場の「ギャップ」にこそ可能性を見た
    工場の手仕事の熱と、ブランド論を語る理念のギャップが「面白い」と感じた浪本氏が、そのズレをデザインで架橋しようとしたのではないか。
  • 体験設計としてのデザイン
    単なる美しさではなく、「触れた瞬間に感じるブランド体験」をビジュアルとして成立させ、例え大企業からのオファーが来ても対等にビジネスができるように、「箱に触れた瞬間に『大切なものを受け取る体験』が成立するよう」デザインしました。

※出典:ある日、コピーライター田中有史が、町工場のキャッチコピーを勝手に作った件
町工場のブランディングにつながるキャッチコピー

◉ 二人の仕事の本質とは?

田中氏と浪本氏の仕事は、コピーライターとデザイナーの仕事領域を越えていました。

1. 「存在意義を掘り起こす」——田中有史氏

田中氏の本質は、表層的なキャッチコピーではなく 企業の奥底にある「まだ言葉になっていない価値」 を掘り起こし、端的で強靭な言語に結晶化することです。

  • 工場の熱気や社長の想いを観察・傾聴し、それを「意思を運ぶ箱。」という普遍的な表現に凝縮。
  • その言葉は単なる広告文ではなく、経営理念や未来を示す「旗印」となり、経営層から従業員、顧客まで共通言語として機能する。
  • 依頼を待たず“勝手にコピー”を提案した姿勢にも、言葉で未来を切り拓く クリエイターの本能が現れています。

2. 「言葉を体験化する」——浪本浩一氏

浪本氏の本質は、コピーを補う「装飾家」ではなく、言葉を体験として成立させるデザイン設計者 である点です。

  • 箱を「ただの物」ではなく、「触れた瞬間に大切さが伝わる体験」に変換。
  • 素材・余白・色彩・触感といった感覚要素を用いて、「言葉が五感で伝わる状態」をつくる。
  • 経営者の理念やコピーの魂を「視覚・触覚・感情」で実感できるようにする。

3. 共通する本質 ——「下請けから共創者へ」

二人の仕事の本質は、それぞれの専門領域を超えて、企業の自己定義を刷新する共創行為 にあります。

  • 言葉(田中)と体験(浪本)が補完し合い、単独では成立しない「ブランドの軸」をつくりあげました。
  • それによって、村上紙器工業所は「貼り箱をつくる会社」から「ブランドの意思を運ぶ存在」へとポジションを変えた。
  • つまり彼らの仕事は、単なる制作物ではなく 企業を再定義する行為そのもの

両者が揃ったからこそ、「意思を運ぶ箱。」は単なるスローガンではなく、村上紙器工業所の未来を方向づけるブランド資産となったのだと思います。


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