経営からみる、パッケージがコスト重視なのは何故?
公開日:2025年10月16日(木)|ブランディング
経営は、数字では測れない “パッケージ” をどう見ているのか
〜無形の価値を、どう経営に取り戻すか〜
経営の世界では、「数字で示せないものは存在しない」と言われます。
売上、利益率、原価率、在庫回転率…。
数字で可視化できるものこそが管理され、評価され、意思決定の根拠となります。
その一方で、ブランドの印象、顧客の感情、体験の記憶といった “無形の価値” は、目に見えないがゆえに、往々にして「経営の外」に置かれてしまいます。
そして、その代表的な犠牲者がパッケージ/化粧箱です。
“見えないもの” に投資する勇気を― パッケージの本質

1. 測れないものは、削られる
多くの企業では、パッケージは「製造原価」や「販促費」として処理されています。
つまり、会計上はコスト項目。
「コストは下げるもの」という前提の中では、どれだけ顧客体験を豊かにしても、“削減対象” として扱われてしまいます。
購買部門のKPIは、コスト削減額。
経営会議では「単価が上がる理由」を説明しにくい。
こうして、意思を込めた箱よりも、安い箱が選ばれる構造ができあがるのです。
2. 経営は「成果」と「効果」を混同している
経営が求めるのは短期的な「成果(Result)」です。
しかし、ブランドパッケージが生み出すのは、中長期的な「効果(Effect)」です。
例えば、上質なパッケージは——
- 顧客の購買体験を高め
- SNS投稿や口コミを促し
- 再購入やギフト利用を増やす
これらの “感情的効果” が、やがてブランド資産として蓄積されます。
けれども、今期の利益に直接現れないために、経営はその効果を「見えない」と判断し、投資判断の外に置いてしまうのです。
感情と体験を “数値” に翻訳するパッケージ戦略

3. 「感情」を翻訳する言葉がない
実は、経営者が感性を理解していないわけではありません。
問題は、感情的価値を経営言語に翻訳できていないことです。
デザイナーは「美しい」「感動的」と語り、
経営者は「利益」「成長」と語る。
この間には、言語の断絶があります。
ここをつなぐ鍵が、ROI(投資対効果)やLTV(顧客生涯価値)です。
パッケージを変えたことで価格が上がり、リピート率が上がり、結果的に粗利が増える——。
このように「感情価値を数値に翻訳」できたとき、経営は初めて “ブランドの箱” を投資対象として認識します。
4. 経営が見ているのは「未来」ではなく「今」?
アップルやティファニーがパッケージに莫大な費用をかけるのは、それが単なる “箱” ではなく、“体験の入口” だと理解しているからです。
箱を開ける一瞬にブランド哲学を感じてもらうことが、長期的な信頼を生み、価格競争から脱する基盤になる。
彼らは、「今の利益」ではなく「未来のブランド資産」を見ています。
つまり、パッケージを “短期的なコスト” ではなく、“長期の信頼装置” として経営しているのです。
コスト扱いから資産へ —— 箱が語るブランド投資

5. 数字に還らない価値こそ、企業の本質
日本の多くの企業は、効率を追い求めるあまり、“非効率の中にある価値” を見失いがちです。
しかし、顧客は論理ではなく感情で買う。
手触り、重み、開ける瞬間の高揚感。
それらはエクセルには載らないけれど、確かに売上を支えています。
むしろ、数字にならないものこそが、ブランドの記憶として顧客の心に残るのです。
経営とは、見えない価値を信じる勇気である
経営は “合理性” だけでは成り立ちません。
見えないものを信じ、育て、磨き続けること。
それがブランド経営の本質です。
パッケージは、その最前線にある「体験のメディア」です。
箱の中に、どれだけ企業/ブランドの意思を込められるか。
それが、企業の未来を語る “沈黙の経営戦略” になるのです。
<お問い合わせ>は、こちらのページへ。
<目的から作例を探す>は、こちらのページへ。
<作例を写真で探す>は、こちらのページへ。
<お客様インタビュー>は、こちらのページへ。
<写真から作例を探す>
弊社の貼り箱事例が、写真一覧でご覧いただけます。

