変えるべき価値と変えてはいけない価値
公開日:2025年09月02日(火)|ブランディング
変える勇気と、守る覚悟──経営を揺るがすブランド判断
昨夜のビジネスニュースで、ポテトチップスのことを伝えていました。
カルビーのポテトチップスのような国民的ブランドにおいては、「変えるべき価値」と「変えてはいけない価値」を見極めることが、長期的なブランド維持と進化の鍵になります。
変えるべきものを誤れば、ブランドは崩壊する

変えるべき価値(時代に合わせて進化させる部分)
これは、環境変化や消費者のライフスタイルに合わせて調整すべきもの。しかし、安易に様々な味を作り出しすぎると、かえってブランド価値を毀損します。
- 健康志向・栄養価の見直し
塩分カット、トランス脂肪酸ゼロ、植物油の工夫など。安心安全の強化は、むしろブランド力を高める。
- パッケージデザイン・体験価値
若年層や海外市場向けに、モダンなデザインやSNS映えを取り入れることは必要。
- 限定フレーバー・地域性
日本各地の食文化や期間限定商品で、「楽しさ」「話題性」を刷新する。
- 購買体験(チャネル多様化)
コンビニやスーパーだけでなく、EC限定パッケージ、ギフト仕様など “購入” の価値を変える。
- サステナビリティ
物流問題を受けて、パッケージのサイズを変えることで体積を小さくし配送効率を高める。

変えてはいけない価値(コア・エッセンス)
これはブランドの「らしさ」を規定する部分であり、消費者の記憶に強く結びついています。
- じゃがいも本来の美味しさ
「素材を活かす」という安心感は絶対的に守るべき。余計な添加物や人工的な味付けに大きく傾くと「カルビーらしくない」と感じられる。ポテトチップス独特のパリッとした食感は、体験価値として維持。
- 手軽で親しみやすいスナック
コンビニやスーパーで誰でも買える“身近さ”。高級スナック路線だけに偏ると、カルビーのアイデンティティを失う。
- 世代を超えた定番感・安心感
幼少期から食べている「変わらない美味しさ」という記憶価値。これを守ることがリピート購買の基盤になる。
- 代表フレーバー(うすしお/コンソメパンチ)
ブランドのシンボルであり、味覚的な“原点”。大幅に変えてはいけない。

まとめ
- 変えるべき価値=「健康・環境対応」「パッケージや購買体験」「限定性や楽しさ」
- 変えてはいけない価値=「素材感」「親しみやすさ」「安心感」「定番フレーバー」「食感」「ブランド体験」
つまり、カルビーは「じゃがいもの美味しさと定番感」という核を守りながら、周辺の時代的要素を柔軟に変化させることで、世代を超えて愛され続けるブランドを維持しているのです。
進化し続ける企業が、決して手放さない “核” とは何か?
これは「規模の大小に関わらず、ブランドにおいて何を変えるべきか、何を変えてはいけないか」は、経営戦略やマーケティングの意思決定に直結するテーマです。
変えるべき価値(時代・市場に合わせて進化すべきもの)
1.表現・デザイン(CI/VI)
ロゴ、パッケージ、広告表現などは、時代の感性や顧客のライフスタイルに合わせてアップデートすべきです。
例:アップルはロゴそのものの「リンゴ」は変えませんが、デザインをフラット化・シンプル化してきました。
2.提供方法やチャネル
顧客の購買行動が変化すれば、販売方法や顧客接点も変わります。
例:スターバックスは、リアル店舗の体験価値を核としつつ、アプリ注文やデリバリーも拡張。
3.機能・品質の水準
技術革新や安全基準に合わせて、商品の機能・素材・サービス品質は改善・進化させるべきです。
例:自動車メーカーが、EVや自動運転へシフトする動き。
変えてはいけない価値(ブランドの「核」)
1.ブランドの存在理由(Why)
「何故、このブランドが存在するのか」という理念や哲学。ここを変えてしまうと、ブランドそのものが崩壊します。
例:ティファニーの「永遠の愛の象徴としての青い箱」は時代を超えて不変。
2.約束する価値(ブランド・プロミス)
顧客が、そのブランドに期待している「体験」や「信頼感」。
例:フェラーリなら「究極の走りと憧れ」、ディズニーなら「夢と魔法の体験」。
3.象徴的な資産(Brand Assets)
色・形・音・ストーリーなど、顧客の記憶に刻まれた資産。
例:コカ・コーラの赤色とボトルシェイプ、シャネルの「No.5」。
資産を守り、時代に投資する ─ ブランド経営の鉄則
まとめ
- 変えるべきは「形」や「方法」(デザイン、チャネル、機能)。
- 変えてはいけないのは「意味」や「約束」(存在理由、顧客の信頼、象徴的資産)。
つまり、ブランドは「核を守りながら、殻を進化させる」存在です。
核を失うとブランドは “別物” になり、殻を変えないと市場から取り残されます。
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