第四話。「文創りのエチュード」〜貼箱×放送作家〜

公開日:2010年9月3日(金)|お知らせ

8月31日から始まったコラボ企画「貼箱 × 放送作家」シリーズの第四話。

舞台脚本、テレビの構成台本、小説など、幅広く活動されている松尾成美さんが主宰する文章教室の生徒さんに、「貼箱」をネタに「エッセイ」または「フィクション」を書いていただき、弊社サイト上に掲載するという企画です。

1日1話づつ、7人の方による計7話の連続掲載を致します。
文章教室【奈良の学園前 アートサロン空】の生徒の皆さんの力作を、どうぞご堪能ください。

宜しくお願い致します。

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 ※使用箱:カーボンファイバーで作られた「マネークリップ」(詳細は、こちらをご覧ください。)

<フィクション>

   黒太郎とプリンセスモモの父母の愛

                                  伊東 香代子

僕は、『ジュエリー蒼(あお)』で生まれた小箱です。お父さんは、ジュエリーデザイナーのベテランです。お母さんは、お父さんの作品を大切に守り、見映えよくする為の箱(ケース)を作っています。
 今回の作品は、日頃お世話になっている町営診療所の田中先生の婚約指輪です。
 お父さんは、先生の純朴な人柄を基に考えて、シンプルな真珠を選びました。真珠の台をプラチナか18金かと悩みましたが、お母さんの「あら、真珠には18金よ!」の一言で決まりました。お母さんは、お父さんのよきアドバイザーです。
 お母さんは、お父さんの作品をよりよく見せる為に何度もケース箱の作り直しをします。
 婚約という大切な指輪なので、外側に貼るのは、黒色の光沢のあるベルベットを選びました。内側には、サテンの白生地(きじ)で波を表現したドレープ作りに苦労しました。そして仕上がったのが僕です。お父さんが、そっと出来たてホカホカの指輪を僕の中に収めると、淡くピンク色に輝く光が気品を感じさせ、お母さんは、ニンマリと満足気な様子でした。
 二人は、どっと疲れを感じ、お昼でお店を閉めて茶の間でゴロリとなりました。足の指でクーラーのリモコンを押したと同時に、お母さんは夢の世界に出発。汽笛のごとく、「グォー、グォー」と鼾(いびき)が聞えます。
 お父さんは『ありがとうな、いつも感謝しているよ』と心の中で呟(つぶや)きました。
 僕は可愛い指輪を中に収め、食卓台の上から二人を見つめていると、お母さんが突然「箱(ケース)は黒太郎君。真珠の指輪はプリンセスモモちゃんよ……」と言いました。
 お父さんは、夢うつつに「いい名前だね」と答えると、スヤスヤスヤスヤと眠りに落ちていきました。
 梅雨明けのギラギラした太陽が、静かに沈む頃、お店のチャイムがなりました。
 二人は、飛び起きてお店に走りました。
 ショーウィンドウのカーテンの向こう側に、心配そうに田中先生が立っていました。
「どうかしましたか? 気分でも悪いですか」とお母さんの顔色を見ながら、脈をとろうとしました。「先生、違うのよ。先生の大切な贈り物を作るのに張り切り過ぎて疲れてしまって、今、お昼寝していたんですよ」
「ありがとうございます」と深々と頭を下げた田中先生。大きな体に気は小さく、心優しくて患者の気持ちを大切にしてくれる先生です。彼のお相手は、看護師の明日香さんです。明るく元気な女の子です。
「先生、この箱は黒太郎。指輪はプリンセスモモって名付けました」とお母さんが言うと、お父さんは「黒太郎君とプリンセスモモちゃん、お二人を幸せにしてあげておくれ……」
涙ぐむ夫婦に、田中先生は、胸が熱くなりました。

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