クリエイティブって、こういうこと

英語で「クリエイティブ」とは創造的ということ。そして「クリエイティビティ」は創造性を意味する。「創造」と聞くと、“じぶんにはできるかなあ”と、なんだか難しく感じてしまいますね。でもクリエイティブとは「創造」ではなくて「工夫」なんだ。と、言われると「クリエイティブ」の見方が変わりますよね。
村上紙器工業所の「こういうことシリーズ」の第3弾。「ブランディング」「コミュニケーション」に続いて、「クリエイティブ」について全3回シリーズでお届けします。

PHP文庫の「インターネット的」という本をご存の方は少ないと思う。著者は糸井重里さん。インターネットの黎明期とも言える2001年に書かれた内容に加筆して2014年に刊行された本だ。

2001年当初、インターネットはまだまだ一般的な存在ではなかった。そのせいか、最初の執筆当時はほとんど読まれなかったらしい。この本がもしインターネットを薔薇色の夢として語っていたとしたら、どうだっただろう。当時の情報量や体験度合いでも、理解ではなく共感はできたかもしれない。体験もしていないのに、身近な存在として語られてもまだまだ興味を持てるどころではなかっただろう。やがて10年以上の時を経て刊行され、評価を得ることができた。やっと時代が追いついたのか。いや、やっとインターネットが普及したということだ。これだけインターネットが普及して生活の一部になったいま現在に読むと、インターネット時代の到来や社会の変化をすでに20年以上前に見通していたんだと驚く。その眼力というか、時代を捉えるチカラのすごいこと。それゆえ“予言の書”とまで崇められるほどだ。

前置きが長くなったが、この本の中に「クリエイティブとは工夫だ。工夫は工夫でも小さな工夫だ。そしてオリジナルな小さな工夫だ。しかも、オリジナルで小さな工夫を続けていくことだ」というようなことが書かれている。ちょっと原文を引用させてもらおう。「『創造性』と訳すよりも、日本語で言うとしたら『独特の工夫』だとか、『いままでにない何か』だとか、『発想し続けようとすること』だとか『そのままにしていられない気持ち』だとか、そんな意味でぼくはクリエイティブという言葉を使います。」(糸井重里著『インターネット的』PHP文庫P221-222より引用)
読んだ瞬間に、これは天啓だ。じぶんがやっているクリエイティブといわれている仕事って、そう説明すれば良いんだ。これは、良い言葉に出会えたと思った。なぜ創造性ではなく工夫かというと、クリエイターの仕事は“問題解決業”だから。そのクリエイターの提供するものや発想自体を“クリエイティブ”ということが多い。 “解決するための創造”と言われると雲をつかむようだけど、“解決するための工夫”と考えると、なるほどと頷ける。だって、工夫がないところに問題の解決はないですもん。「創造」というと“表現者”を想起してしまう。でも、クリエイターがやっていることは単に表現でない。というか、単なる表現だと困るわけ。「成果物(あまり好きな言葉じゃないけど)」で見せるとどうしても表現をやっているように見えてしまう。そこがある意味、クリエイターが自身を説明する際の悩みでもあるし、クリエイターにすら勘違いを生んでいるのではないかしら。クリエイターがやっているクリエイティブということの本質は「問題を解決する工夫」「工夫のあるアイデア」ということにあるのだ。

わかりやすく職業的な対比で考えてみると同じ問題解決業のようでも、クリエイターは「オリジナルで小さな工夫」業。マーケッターやコンサルタントは「道標を提示するノウハウ」業ではないだろうか。クリエイターは問題解決のアイデアを工夫する。マーケッターやコンサルタントは問題解決の「枠組み」を提示する。そこに違いがある。(と、ワタシは思っている)

クリエイティブは、アイデアこそ命。

「枠組み業」と「問題解決業」の違いは、アイデアのオリジナリティだ。そこに、独自のアイデアがあること。それこそが、クリエイターの役割であり使命である。「こういう枠組みがあります」「この枠組みを使って答えを見つけましょう」というのと、「この考え方ならこんなアイデアを導きます」「このアイデアでやれば問題は解決します」というのは根本的に異なる。クリエイターが提示しているのは後者だ。表現はあくまでもアイデアのアウトプットのカタチだ。考えからアウトプットまでは、一貫したコンセプト(What to say)に貫かれている。コンセプト(What to say)があるからブレない一貫性が生まれると言っても良いだろう。コンセプトを最初から最後まで貫きながら言葉がありデザインがあり、一連のコミュニケーション表現(How to say)がある。もちろんWhatの前にはWhyがある。それは明快な目的、ビジョン、意思があるということ。だから、工夫が生まれ、問題が解決できるのだ。Howだけがあり、Whatという意思や企みがないと、チーム全員の意思が共有できないし、コミュニケーションターゲットに意思が伝わらない。そして何より、ココロを揺さぶらない。伝達事項は伝わっても、気持ちが届かない。これはコミュニケーションではなくインフォメーションといわれる行為だ。世の中の課題の多く(ほぼすべてと言ってもいいかもしれない)は、コミュニケーションを改善したり円滑にしたり、促進すれば解決する。本当に伝えねばならないことが正しく気持ち良く伝われば、モノゴトはたいがい上手くいく。まずWhatがあり、Whatを伝えるためのHowがあるか?それが“工夫をする”ということだ。創意工夫といった方が良いかもしれない。ビッグアイデアである必要はない。小さな工夫で良いのだ。そして、オリジナリティがあれば、なおさら良い。工夫があるから、おっ!と、振り向かせることができる。記憶に残ることができる。

ここではオリジナリティがあるということが大事になる。オリジナリティは他と違う視点と工夫があること。そして、この独自の工夫を続けていれば、おのずと独自の顔が形成され、ブランディングができていくのだ。オリジナリティはブランドの時代にはとても大切な要素。オリジナリティといっても本邦初のようなものは、そうあるものではない。オリジナリティをどこでどう出すか、そこにも工夫とアイデアを求めよう。
そこにアイデアはあるか。それを問い続けること。アイデアがなければ、アイデアが出るまで続けること。それも含めてのクリエイティブだ。

クリエイティブとは正直ということ。

クリエイターは正直でなければならぬ。と、思う。いちばんの“正直”は、じぶんに正直ということ。じぶんが面白くないものを外に出さないということだ。そうやってメーターを振り切る癖がつけばおのずと結果につながる。とうぜん、信用につながる。いちばんやってはいけないのは、クライアントに阿る(おもねる)ことだ。クライアントから出てきたミッションをそのまま有り難がってはいけない。必ず再定義して、本当にそのミッションで良いのだろうかというところからはじめないと、良い結果を生まない。ましてディティール(色や言葉やデザインなどの表現)アイデアを言うクライアントがたまにいる。媚びるようにすぐ受け入れていないだろうか。それは、けっして営業上手ではない。不誠実だ。なにも「プロがやるクリエイティブに口を出すな」とまで言う必要はないが、なぜそれはダメなのか、こっちの方が良いのかということを説明できるロジックは持たねばならない。クライアントのアイデアが本当に良いかどうかを見極めることも正直の一部だ。本当に良ければそれを受け入れれば良い。良くないと思うなら、別の考え方を示す。それが、真に正直ということだ。「正直そうな顔」をして、「さすがですねー」と持ちあげる、太鼓持ちみたいなクリエイターを見かけることもあるが、一見クライアントを立てているように見えて、じつは誠実ではないということ。だって、それは考えることを捨てている行為だもの。そういうひとは、良いアイデアを連れてくる回路を持っていない。

今日の会議はクリエイティブだった。

日常の会話の中でこういう、クリエイティブの使い方をしていませんか。これこそ、クリエイティブの本質だと思う。創意工夫のある発言やアイデアがたくさん出た会議を指す。サッカーの監督が「きょうの試合はクリエイティブだった」というのも同じことだろう。選手たちが状況を鑑みてみずから戦い方を変えたり、個々の判断で相手の隙をついたりするような戦い方を指しているのではないだろうか。

貼り箱に屋におけるクリエイティブとは。

村上さんは常日頃「貼り箱はブランディング・ツールだ(そして、コミュニケーショ・ツールだ)」と標榜している。そのことがすでにクリエイティブな貼り箱屋さんということを示しているように思う。まったくオリジナルな視点であり自社の強みだ。単にコストを追求するだけなら、そこにアイデアはいらない。仕入れ先のお尻を叩けば良い、貼り箱をブランディング・ツールへと昇華させるためには、さまざまなアイデアが必要だ。単に箱だけを見つめているだけではクリエイティブにはなれない。そのブランド全体のことを常に考えておかないと創意工夫のあるアイデアは出てこない。アイデアは視点が生み出すものだから。

◎次回は「工夫とはひとマネじゃない」というテーマで書いてみたいと思います。どうぞ、ご期待ください。

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