村上紙器工業所の新コンテンツ「ブランディングって、こういうこと」もいよいよ5回シリーズの4回目になりました。皆さん、少しずつでもブランディングのことが理解できてきたのではないでしょうか。そこで、今回は少し具体的な方法論をお伝えします。ぜひ、お仕事で実践することでじぶんのものにしてください。ご質問がありましたらお気軽にお寄せください。必ずこの欄にお返事を掲載します。
前回は「イメージとは積み重なるものだ」というお話をしました。では、どうやってイメージを積み重ねていくのかということを、今回は具体的にお話しします。
皆さん、「新曲キャンペーン」というものをご存知ですよね。歌い手さんが新曲をプロモーションするために、テレビ局などをまわっていく、アレです。スタッフ全員が統一されたデザインやカラーのTシャツ(あるいはウインドブレイカーであったり)を着用しています。あれは、なぜだと思います?
みんながバラバラのものを着用していたら、どうでしょう?共通の行動を起こしている一団に見えますか。見えないですよね。カラーやデザインが統一されることで同じ一団に見えるので、見た人にも記憶されやすくなります。「あの赤い集団ね」「たしか、歌手の◯◯さんの新曲キャンペーンだったよね」「いい歌だったよね」と、具体的な記憶がなくても何かしらの記号的な記憶となって残ります。このアタマの中に残された記号的な記憶こそ、イメージなんです。(ここではブランドイメージと言ってもいいでしょう。)
そして、おそろいのTシャツだけでなく、スタッフが手に持っているノボリにもTシャツと同じカラーが使われ、同じマーク(ときには曲名やキャッチフレーズ )がデザインされていますよね。それ以外にもTV局に貼ってもらうポスター、各局を訪問するクルマも同じようなカラーリングやデザインになっています。
そうやって、伝えたいイメージをいろんなツールに連動させることで、伝えたいイメージと出会うひとの数が増えていきます。同じひとが伝えたいイメージと出会う頻度を上げることで、伝えたいイメージはどんどんと積み重なっていくわけです。
ここで気付いていただきたいのが、“メディア化する”という視点です。Tシャツもウインドウブレイカーも、スタッフそれぞれが私物の好きなもの着用していたら、それは単なる衣類ですよね。ところが、全員が着用するTシャツを同じ要素(色、マーク、言葉など)でデザインした途端、それは“メディア”になっているというわけです。
ここでいう“メディア”とは、情報をのせて走るvehicle(英:ビークル=乗り物)ということです。単なる衣類から“メディア”になったTシャツ。そこにイメージを積み重ねていく実践的な方法の視点が宿っています。
覚えてください。大切な視点です。
前に話したかもしれませんが、ブランドイメージに影響を与える消費者接点のことを“コンタクトポイント”あるいは“タッチポイント”などと言います。会社や商品などは、じつはたくさんの“コンタクトポイント(ここではこの言い方に統一します)”を持っているはずです。ただし、せっかく持っているのに、“ブランドイメージに影響を与える消費者接点=コンタクトポイント”と認識していない場合もあるでしょう。大切な消費者との接点なのに、ここで示したように“メディア化”されていないことも多いでしょう。
なぜ、“メディア化”することが重要かというと、“メディア化”することで、それはブランディングツールになるからです。新曲キャンペーンのTシャツ、ノボリ、クルマを想起してください。ブランディングツールになることでブランドイメージの構築に寄与します。寄与するものが多くなるほど、ブランディングは加速されます。
このことが理解できれば、ブランディングツールとして活用できる“コンタクトポイント”があるのに、まだ未利用であることに気づくかもしれません。また、こんな“コンタクトポイント”をつくればもっと効果が出るなあと、アイデアも広がるはずです。新曲キャンペーンの例で言えば、もしもノベルティやネームカードも配布するなら、それらもブランディングツールとして取り込んでいけるはずです。さらに、もっと別の“コンタクトポイント”のアイデアがあるかもしれません。見逃していたら、もったいないですよね。統一された色やマークなどで“コンタクトポイント”をつないでいけば、効果は飛躍的に上がります。こういうふうにいろんな“コンタクトポイント”を連動させることは、“コンタクトポイントをリンクする”と言えるでしょう。そして、コンタクトポイントの有機的な組み合わせを計画することは、 “コンタクトポイントのデザインまたは設計”と呼ぶことができるでしょう。
いかがですか。“ブランディング”の具体的で実践的な方法論を理解できましたか。もし、ブランディングがうまく行っていないとしたら、“コンタクトポイントの設計”が上手くできていないのかもしれません。そしてここが難しいのですが、統一されたカラーやマークならなんでもいいと言うわけではありません。ここは、ある意味プロの領域です。
さあ、いよいよ次回は最終回。理解できるまで、シリーズ1〜5を何度でも読み返してくださいね。