◎村上紙器工業所
「箱Bar」第1回

【箱Bar】第1回 【箱Bar】第1回 今宵のゲスト:パッケージデザイナー 三原美奈子さん

初夏の某日、外は薄暮。

となり同士に仲良く腰掛けた男女の間で交わされる親密な会話は…。密やかな囁きか、それとも熱いデザイン論か。そっと、聞き耳を立てたくなるふたりの後ろ姿。さて、話の展開は。

【箱Bar】パッケージデザイナー 三原美奈子さん

バーカウンターは人生の学校である。

ここは、とあるBAR。村上 誠が足繁く通う彼の地元のBAR、ホームグラウンドである。村上 誠にとってBARとは「人生の学校」である。BARの止まり木に羽を休め、1日の仕事を振り返るとき。未来に想いを馳せるとき。そして何よりも、ふと隣り合わせたひとと語り合う至福のとき。
酒の神からのプレゼントともいうべき、ひととの出会い。意気投合したときの会話の楽しさ。そこに、人生の学びがたくさんあると村上 誠は言う。今宵もまた、その幸福(口福?)を求めて、村上 誠はBARへと出撃する。

三原美奈子さんはこんなひと。

パッケージデザイナー。大阪に生まれ、2歳から奈良市で育ち、現在は大阪に住まう。京都精華大学美術学部デザイン学科卒業。デザイン会社に入社後、2010年三原美奈子デザインを設立。食品、ギフトをはじめ各種パッケージデザインを手掛けている。
公益社団法人「日本パッケージデザイン協会」理事、パッケージデザイナーグループ「pakection!」主宰、大阪パッケージアカデミー講師など。パッケージデザインを広める活動を精力的に行なっている。
https://miharadesign.com/

【箱Bar】パッケージデザイナー 三原美奈子さん

箱BARでやりたいこと。

村上紙器工業所は箱(中でも貼り箱という種類の箱)を製造する会社である。その箱にはカタチや構造というデザイン、表面の意匠というデザイン、色や紙の種類というデザイン。考えてみたら、デザインのない箱はない。デザインって、なんだろう。ひいてはパッケージにおけるクリエイティブの役割は、なんだ。そんなこんなのお話を村上 誠と親交のあるクリエイティブと関わる方と語ろう。
しかもオフィスの応接室やホテルの喫茶ルームのような場所ではなく、村上 誠が「人生の学校」とさえ言うBARのカウンターで隣り合って話してみたら、どんな話になるだろう。きっと、インタビューではなくこころを開いた意見の交換になるのではないか。多少お酒と場のチカラも借りながら、いままでなかったような会話を引き出せたら、と、思うのであります。

対談場所:村上 誠が夜な夜な通う「BAR」

BAR好き、洋酒好きの村上 誠のホームグラウンド。ウイスキーの品揃えも本格的。カウンターに座りバックバーを眺めるというBAR好きならではの醍醐味も味わえる。マスターの河崎優飛さん(34歳)はカクテルの腕はもちろんだが、料理の腕もなかなかのもの。じつは、お腹が空いていると所望すれば、麻婆豆腐丼が出てきたりするのだ。

bar bottoms up(バーボトムズアップ)
大阪市西成区千本中1-4-10 グランドムール岸里 1F
TEL:06-6656-1340
バーテンダー:河﨑優飛

暮らしはパッケージに囲まれている。(三原)

(村上)こんにちは。お久しぶりです。

(三原)こちらこそ、ご無沙汰しています。

(村上)三原さんと知り合ったきっかけは、確かSNSですよね。

(三原)そうです、そうです。わたしがTwitterに冒険家の植村直己さんのことをつぶやいたら、村上さんが反応してくれたんです。そこからだんだんお付き合いが深まっていきました。

(村上)最初はパッケージとまったく関係のない話だったんですね。(笑)ところで、三原さんはいまもTwitterによく投稿していますよね。それも、ほぼパッケージに絡んだネタのように思いますけど。よくあれだけ、普段からパッケージのことを考えていますねえ。

(三原)パッケージデザインを少しでも多くのひとに広めたいという、それに尽きますね。

【箱Bar】パッケージデザイナー 三原美奈子さん

(村上)ところで、長い付き合いで、いまさらですが(笑)。なんでパッケージデザインをやっているんですか。

(三原)ひと言でいえば、立体が好きってことなんです。大学ではビジュアルデザインという学科に所属して、ポスターやタイポグラフィーを学んでいたんですが、どうも消化不良だったんです。でも、3年のときに授業でパッケージデザインがあって、これは面白い、メッチャ面白いなあと。向いているかもしれないと思いました。プロダクトのひとの感覚に近いんだと思います。手でつくるという、工作感が好きなんですよ。

(村上)なるほど。パッケージは工作的ですもんね。ところで、パッケージが大好きなひとの毎日って、どうなっているのかな。とても興味があります。

(三原)暮らしの中ってパッケージで溢れていますよね。日々の買い物でスーパー、コンビニ、百貨店と、いわば毎日パッケージパトロールをしているわけです。(笑)若いころはそんなことするなんて面倒だったけど、いまはそういった毎日の定点観測が、アイデアやパッケージを考察する視点の蓄積になっているんだと思います。

パッケージは世界と繋がっている。(三原)

(村上)立体への興味はずーっと続いているわけですね。

(三原)変化は当然ありますよ。最初は立体ということからパッケージにひかれていって、いまはパッケージの社会性に興味があります。

(村上)社会性って?

(三原)パッケージって社会の情勢に影響を受けるじゃないですか。いまなら環境とかエネルギーの問題とかを意識せずにはいられないわけで、世界の動きと繋がっているところに面白みを感じています。パッケージの開発やデザインって売り上げに直結するので、美粧性だけじゃなくって商品の開発に近い感覚でやっていけるところにも面白さを感じています。

(村上)奥が深いなあ。

(三原)さらにもうひとつ付け加えるとすれば、形状や素材から入れるところにグラフィックデザインにはない面白さがありますね。紙だけじゃなくて、ビン、缶、樹脂といろいろ素材の候補がある中から何がマッチしているかを考えるのも面白い要素ですね。素材選びにはコストも絡みますから、印刷方法も含めてすべて知っている必要があります。だから、すごく勉強のしがいがあります。

【箱Bar】パッケージデザイナー 三原美奈子さん

(村上)すべて知っていないといけないって、凄いですね。三原さんはパッケージをどんな基準で評価しているんですか。

売れるデザインを評価したい。(三原)

(三原)「このパッケージで、買うか、買わないか」。発注主からは常にそこを言われるので、“売れるパッケージ”という視点を意識せざるを得ません。「買うか、買わないか」って「切った、張った」みたいで、バクチみたいですが。パッケージは売り上げと直結しているから、バクチではできないんですけどね(笑)。売り上げを上げるために、私たちパッケージデザイナーは存在します。

(村上)デザインの良し悪しとはまったく次元が違う観点ですね。厳しいけど、そういうナマの話は勉強になります。身に染みます。

(三原)デザイナーとしては素敵なデザインだと思っても、本当にターゲットに響くかどうかは分かりません。たとえば、年配の方だと文字が小さいと読めないでしょう。いくらデザインが良くても、読みづらいとなにも書いていないのと同じことだから響きようがないんです。だからデザインの良し悪しだけでは判断しない。いままでの蓄積があって、個別の事例に合わせてじぶんなりの判断基準があります。それは、良いデザインと売れるデザインなら、売れる方が良いということです。

(村上)まさにプロの判断ですね!

【箱Bar】パッケージデザイナー 三原美奈子さん

(三原)というか、当然の感覚だと思います。いちばん最初に、パッケージをもっとたくさんのひとに知ってもらいたいって言いましたよね。それは、アート活動をしているひとたちと出会ったときに、「パッケージデザインってなに?」って言われたからなんですよ。もちろんパッケージをデザインしているひとがいることも知らなくて。これは、パッケージの面白さを伝えないと、本気で広めないとパッケージにもパッケージデザイナーにも未来がないなあ、と。

(村上)それは、ひどいと言うか、なんというか。でもパッケージの啓蒙活動には、そういう原動力があったんですね。

(三原)はい、それ以来、いろんなことをやってきましたが、最終的には“求められるひと”でありたいと思ってきました。

(村上)エライ!頭が下がります。ところで話は変わるけど、三原さんにとってのデザインってなんですか?

デザインは楽しみ。(三原)

(三原)ひと言でいうと“楽しみ”。

(村上)パッケージデザイナー三原美奈子の原点ですね。この辺でちょっと話題を変えましょうか。きょうは三原さんのデザインに影響を与えたモノということで、「パッケージ」「身の回りのもの」「書籍かグッズ」から何かを持ってきていただくようお願いしています。まず、「パッケージ」からご紹介いただけませんか。

モロゾフの缶に、こころを鷲づかみにされて。(三原)

(村上)あっ、これはモロゾフの缶ですね。非常に馴染みのあるパッケージです。このどこが三原さんのデザインに影響を与えたんでしょう。

(三原)小学校4年生ころに、あるひとがお家へお土産にと持ってきてくれたんですけど、これがわたしにとっての最初のパッケージデザインでした。この缶をじぶんのものにしたい、すごく欲しいと思いました。絵柄で説明していないけど、“宝箱感”があるでしょ。沈没船の中から出てきた宝箱を連想してしまいますよね。唯一無二の魅力をもつこの佇まいに幼いわたしのこころは鷲づかみにされました。わたしにとってのパッケージの原体験です。

【箱Bar】パッケージデザイナー 三原美奈子さん

このパッケージに出会ってから40年。いつ見てもギフトのワクワク感が風化しないのが凄いです。こんなパッケージがつくれたら嬉しいでしょうね。いまの時代って管理サイクルが早くて、売れないけど我慢するようなことはしないですよね。すぐに、デザインの見直しって話になる。面倒臭いことはできるだけしないから、40年も持つようなロングセラーをつくるのは難しくなっていると思います。大事に使う文化は守らないと。

(村上)ですよね。製造業でも同じです。いまは、すぐに見直しの時代。とくにコストの、ね。(笑)さて、次は三原さんのデザインに影響を与えた「書籍やグッズ」ということでご紹介をお願いします。

ハダカになってナンボのもんや。(三原)

(三原))まずこっちは鹿目尚志(カノメタカシ)さんの本です。わたしがパッケージデザイナーとして強く影響を受けたのは鹿目さんと、その鹿目さんの弟子だったわたしが所属していた事務所の社長(西野修さん)なんです。この本には鹿目さんの言葉やエッセイと作品が集めてあります。鹿目さんはカノメイズムと言われるほどにバイタリティのあふれるひとで、パッケージ業界ではとても有名です。そしてこっちは、鹿目さんの「Mold(モールド)」という作品です。

(村上)これは、有名ですよね。たしか、ワインケース?

(三原)そうです。パルプモールドという紙の原料となるパルプの成形品を使ったワインケースです。実際の商品パッケージではなくてアートワークなんですけど、鹿目さんを象徴する作品でもあります。この時代のひとは、デザインの仕事だけじゃなくて、時間とお金をかけてちゃんとじぶんのアートワークをやっていたところがすごいと思います。この本に鹿目さんの言葉で「ハダカになってナンボのもんや」というのがあるんです。この言葉に若いときにガーンと、衝撃を受けたんです。
“カッコをつけたものをつくるな。せんぶ丸裸になってじぶんをさらけ出して評価を受け入れろ。それで恥ずかしいものしかできなかったらそこからスタートしなさい”という教えだと思っています。本当にこころまで丸裸になるのは難しいと思いますし、なかなかできることではありません。でも、格好をつけてもじぶんが持っているもの以上は出せないわけですから、じぶんを成長させるしかない。この言葉を乗り越えたいです。

【箱Bar】パッケージデザイナー 三原美奈子さん

(村上)すごい言葉ですねえ。究極です。三原さんも、もっともっと突き抜けて、究極をめざしてくださいね。さて、それでは最後は影響を受けた「身の回りのもの」なんですが、なんでしょう。

旅が好き。(三原)

(三原)これです。何に見えます?

(村上)これが、三原さんのデザインに影響を与えたもの?

(三原)よく見るとわかりますが、ノアの方舟の木彫りです。これはアルメニアで買ってきたお土産なんですけど、アルメニアにはノアの方舟伝説があります。わたしは旅が好きで、いろんな国へ旅することでデザインに影響を受けます。国が違うと発想が違いますよね。旅はわたしの栄養なんです。こういうユルイお土産が好きで、よく買ってくるんですけど。旅が好きということの象徴として持ってきました。
基本はひとり旅で、じぶんがどこにも属さないでウオサオするのが好きです。想像もつかない場所をじぶんの足で歩くことで栄養になって、デザインも頑張ろうという気持ちがわいてきます。ひとには普段いるところではいろいろ役割があるけれど、一人旅だと役割のない一個人としてその場に立てることでじぶんをリセットできて、また血が騒ぐんです(笑)。

(村上)何かにインスパイアされたり、デザインと向き合う気持ちをリセットされたり。ノアの方舟はある意味、普段のストレスや障害物の大洪水からの救いの象徴ということかもしれませんね。

(三原)これからも、日本でまったくイメージがわかないようなところへ行ってみたいです。直近ではインドへ行く予定です。

(村上)ほう、インドですか。ひとが多くて勢いのある国だから刺激も多そうですね。さて、これからのことをお聞きして締めにしたいと思います。

今後も、身も蓋もある関係でいましょう。(村上)

(三原)10年近く前でしょうか。展覧会に出す作品をつくろうとして「こんなんできませんか」と、村上さんにいろいろと相談したら、その度にことごとく出直せと言われました。怒られてばかりでした。

(村上)だって、「やらない」「やれない」って言っちゃったら身も蓋もないじゃないですか。そこは箱屋ですからねえ。身も蓋もある話にしないとね(笑)

(三原)上手い!(笑)

【箱Bar】パッケージデザイナー 三原美奈子さん

(村上)今後やってみたいことって、どんなことですか。

(三原)普段考えているのに、意外とこういうときに言えないんです。こう言うときに言うべきですよね。言うと実現するかなあ。

(村上)言ってよ。相談してきたら、身も蓋もある話にするから。

(三原)漠然としていますが、世界で発売するものをやってみたいです。知らないまちでじぶんのつくったものと出会いたいな。出会った瞬間に「あー、こんなのをつくったよね」と言ってみたいです。

(村上)ぜひ、実現してください。期待しています。今日はいろいろとお話を聞かせてもらって、ありがとうございました。あらためて三原美奈子という人間を知り、気付かされたことがたくさんありました。刺激もたっぷりといただきました。まだまだ話し足りないけど、この辺で一旦終わりにして、飲みながら続きを話しましょう。

(三原)こちらこそ、じぶんの考えを言語化する良い機会をいただき、ありがとうございました。引き続き、よろしくお願いしますね。

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訪問日:2023年05月23日(火)
公開日:2023年08月17日(木)

※掲載内容は取材時の情報に基づいています。

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