貼り箱屋の挑戦。“ものづくり”から“ことづくり”へ

公開日:2014年9月5日(金)|お知らせ

先日、初めて業界紙からの取材をしていただきました。
創業50年以上の老舗新聞、東京の「板紙段ボール新聞」の副編集長が来られました。
読者は主に段ボールメーカーを中心とした紙器、紙加工会社で、公称全国3,000部の発行部数だとか。業界誌に興味がない私にとっては、よくわかりません(笑)。記者さんが興味のある会社を訪問して、経営者にインタビューするという企画だそうです。

弊社HPをご覧になり、お話を聞きたいと東京から来られました。
興味を持たれたのは、製造業にはあるまじき「ハード面だけではない、ソフト面重視の考え方(特に、ブランディング思考。)」や私の変な経歴(笑)など、“箱屋”らしくないところがおもしろそうだったようです。

1時間という約束が、しゃべりだすと私も止らず、結局約2時間のインタビューでした(笑)。
特に興味を持たれたのは、ウチが「ハードとソフトの融合」というプロセスで“貼箱”を作っていくところ。基本的に、我々の業界ではこういう発想はありません。多分、一般的な貼箱屋が求める顧客層とは全く違うんだということを、しゃべっていて自分自身も改めて感じました。
そういう意味では、やはり「自身の考え方を人に話す」というのは、いいことです。
今あるのは、「ブランディング・デザイン」に出逢い、それを感じることが出来て、そして素晴らしい人たちに囲まれていたからでしょう。
その全てのこと、人たちに感謝したいです・・・。

<板紙段ボール新聞> 企業訪問

“ものづくり”から“事づくり”

●代表:村上誠●従業員数:6名●事業内容:貼箱企画・製造・販売●主な設備:断裁機、罫線入れ機、手動貼箱製造ライン●沿革:1952年初代村上勝基氏が大阪市阿倍野区で創業。63年村上卓司氏が代表就任。78年現在地に移転。2000年ホームページ開設。05年村上誠氏が代表就任。09年HPリニューアル、現在のデザインに。

差別化より独自化。

村上紙器工業所の村上誠代表は目指す方向性をこう述べる。そしてその姿勢が端的に表われているのが同社ホームページ。あえて語弊を恐れず言えば、その内容は“来るものを拒む”可能性もある。販路拡大ツールという役割は同業他社のそれと変わらないが、とにかく箱を安く、早くというユーザーは、あるいは途中で閲覧を止めるかもしれない。

 代表は「(HPが)フィルターになっている面はあるのかもしれない」とした上で「見て、読んで共感してくれたお客様は、相見積りも取らず当社に頼みたいと強く思ってくれている」という。なぜか。もちろん貼箱屋である。だが、同社の場合、単に箱を製造することを目的としていない。顧客との間で何度もヒヤリングを行い、修飾部分を削ぎ落とし、求める箱のイメージ、顧客自身も気付いていない自社の姿、梱包する製品の「本質」を掘り起こし、それを最終的に、貼箱に落とし込む。これが同社の箱作りであり、代表の言葉を借りれば「ブランディング・デザイン」を経た結果として「センスを包む」のだ。

 創業は祖父・勝基氏が貼箱にとどまらず、広く紙加工業をはじめた1952年。和菓子職人だった、父の卓司氏が婿養子として同社を継いだ頃には貼箱専門となっていた。  
 典型的な家内工業で、当時は建屋1階が作業場で2階が住居だった。手作業も今に増して多く、刷毛で職人が糊付けしていた。糊は姫糊(米)や水糊。均一に塗ろうとすれば、確固とした職人技が求められる。要であるからこそ、職人が最も偉い。同社の場合、勝基氏の妻、現代表の祖母であった。

 63年生まれの代表は、当然そんな働く家族の姿を間近に育った。長男なので、いずれ跡を継ぐつもりだったが、「まずは自分がやりたいことに挑戦したい」との強い思いを持っていた。
 電気工作好きだったので工業高校卒業後、エンジニアとしてNHKに入局。その後、保育士、カナダでの生活などなど、家業を継ぐため印刷会社に就職した20代半ば過ぎまで、様々な経験を積んできた。「損もしているかもしれないが、遠回りした部分が今に活きている」と振り返る。 

 そして現在の方向性を決定付けたのが、代表に就任してから数年後の出会い。とあるセミナーでのデザイナーの話だ。「デザインの本質は色・形ではない。それらはあくまでも最終的なアウトプットに過ぎない」「ブランディングするためにそれら最終形がある」に衝撃を受けるとともに「取り入れることができると直感した」。つまり「量産も難しいし価格勝負も無理だが、一定水準以上の貼箱を製造できる技術力は持っている。それをブランディングと組み合わせたら可能性が広がるかもしれない」と。

 「貼箱を製造すること=ハード」に「ブランディング・デザイン=ソフト」の融合を目指した。“ものづくり”から“こと(事)づくり”への転換だ。
 無論、当初より全てが上手くいったわけではない。そもそもどのように「貼箱の製造=ハード」をブランディング・デザインへと落とし込んでゆけば良いのかわからなかったという。数年間は仕事の時間を削ってでも可能な限り、デザイナーらの作品展に参加させてもらうなど、行動を共にして徹底的に考え方の吸収に努め、徐々に方法論を確立していった。

 求めるものがソフト(ブランディング)である以上、なかなか言葉で表現しにくい面はあるが、冒頭に紹介したHPをしっかり読み進めていけば、その一端が理解できるのではないだろうか。

 仕様決定までには多くの時間を費やす。直接会う場合、電話、メール方法は様々だが、双方が納得いくまでヒヤリングしなければ、顧客が求める本質は見えてこない。箱の知識の少ないエンドユーザーということもあるが、メールならば時に往復100通を超えるという。

 ページ内の「作品紹介」には採用事例が多数並ぶ。エンドユーザーと直に取引しているからこそ。最終形体としての箱だけでなく、そのプロセスも詳細に記されている。このような過程を経て生み出された箱は、既に顧客の思いや望みがしっかりと入っている。そこに極めて高い顧客満足度が存ずる。
現在、HPを媒介としたブランディング・デザインの受注は同社全体の3分の1を超えるまで成長している。今後も高い潜在需要がまだまだ眠っている。伝統に基づくハードと業界では異端ともいうべきソフトの融合は、更に進化していくに違いない。

板紙段ボール新聞  2014年(平成26年)9月7日号より

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